その優しさでとどめを刺して


「おげぇえぇ」
「大丈夫か?」

青い顔をしながらベンチに腰掛ける私の背に、シロの手が添えられる。


「美嘉どしたん?」
「気持ち悪いって」
「えぇ。もしかしてさっきので?」

多分な、と言いながら未だにげぇげぇ言ってる私の背をさすってくれるシロは、長い付き合いもあってか随分と慣れていた。


ガタガタガタガタと機械音が聞こえたあと、一呼吸おいてきゃーーっと楽しそうな悲鳴が聞こえてくる。

まさに今の私の体調不良の元凶ともいえる、絶叫系アトラクションからの音だった。


「昔から乗れないのに乗りたがるんだよ」
「なんでよ」

きゃいきゃいと笑う周りに、バカなんだよと言ったシロの声は言葉に反して随分と柔らく、気持ち悪さとは別のむずむずが胸のあたりでうごめく。


「うぅー。どうせ、バカだよ……」

幸いにも口から固形物がこんにちはするようなことは起こっておらず、えずく合間になんとか出した声はあまりにも小さすぎて、騒がしいこの場では誰にも届かない。


ちょんちょんとシロの制服の裾を引っ張って、先行っててと目線で促せば、さすがは幼なじみ。心得たというようにぱちりとウインクを見せた後、すぐに周りに話し始めた。

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