「とりあえず俺に愛されとけば?」
「俺への当てつけ?」





「やった!グロス買っちゃった!」

「よかったね、香澄」




ピンク色の紙袋を大事そうに持った香澄はずっと欲しがっていたSAKURAのグロスを手に入れルンルンだった。



一方、私は佐倉さんに渡された香水の箱を未だに握りしめたまま。



あのあと佐倉さんと別れた私たちは、混み合う店内で香澄の欲していたグロスをなんとかゲットし店を後にした。



駅に向かいながら「にしてもさ、」と香澄がおもむろに口を開く。




「あのイケメンがまさかSAKURAの社長だったなんて、びっくりなんだけど!」

「うん……」

「佐倉さんだっけ?」

「うん……」

「佐倉さんだから、“SAKURA”なのか。納得!」

「そうみたいだね」




私の上の空な返事に「ちゃんと聞いてる?」とツッコミを入れてくる香澄。


今の私はそれどころじゃない……!
頭の中は、ぐるぐるぐるぐる佐倉さんを思い出せ、思い出せと、脳みそフル回転状態。

店のお客さん?大学生のとき?高校生のとき?と、記憶をたどる。



< 27 / 110 >

この作品をシェア

pagetop