「とりあえず俺に愛されとけば?」




『あなたに私の全てを捧げます』
shepherd’s purse(シェパーズパース) & cherry blossom(チェリーブロッサム) fragrance(フレグランス)大人で優美な女性を飾る花の蜜の香りをお楽しみ下さい。


ポスターの文字の羅列を目で追う。それはいま私の鞄に入っている発売前の香水のポスター。


シェパーズパース。店長に言われた言葉を思い出した。


shepherd’s purse(シェパーズパース)って、なずなの花のことだろ”


いや、いや、まさかね。でも、


“なずなの為に作った商品だ”


佐倉さんは確かにそう言っていた。でも、そんなことありえないよ。たまたま、なずなの花の商品を佐倉さんが作って、私の名前がたまたま、なずなだっただけ。それだけ。


あれ、でもなんで、


“私の誕生日”

“1月17日だろう。だからこの香水の発売日もその日にした”


なんで、私の誕生日に合わせて発売するの?


ずっと胸にもやもやがつかえて、頭の中で同じ言葉がぐるぐる、ぐるぐる再生される。




「コーヒーでよかったか?」

「え、あ、はい」




悩む私の思考は佐倉さんの声音により遮断された。先ほどまでのスーツのジャケット姿ではなく、ワイシャツ姿で小さなトレーに黒いマグカップを2つ乗せた佐倉さんがドアの向こうから現れた。




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