野いちご学園 逆ハーアイドル寮

絢人先生と稲森さんの歌声が聞こえないところまで、今すぐ逃げよう。

私は急いで体の向きを変える。



急に二人の歌声がピタッと止まった。

完全に私の失態だ。

涙を拭こうとあげた腕が、ドアに当たってしまったから。



「えっ？　花園さん？」



生物準備室の奥から聞こえた、焦っているような絢人先生の声。

開いているドアの隙間から、私だってバレちゃったみたい。



現実を理解する時間があったんだから、走り去ればよかったものの。

私はドアの前で固まったままで。

ガラガラと引き戸が開いたことにビックリして、涙目のまま振り返ってしまいました。



生物準備室に一歩入ったところ。

開けたドアに手をかけ、立っている絢人先生。