野いちご学園 逆ハーアイドル寮
「花園さん、何かあったんですか?」
泣いている私を、心配してくれているみたい。
「辛いことがあったんですか? それなら先生に話してください」と、取り乱したように早口をこぼしたけれど。
絢人先生が、稲森さんと歌っていたのが嫌なんです。
生物準備室で絢人先生とハモる相手は、私だけにして欲しかったんです。
そんな自分勝手すぎる本心なんて、吐き出せるわけがなくて。
「なんでも……ないですから……」
うつむいて、手の指で涙をぬぐうことしかできない。
湿っぽい空気を一新しようと思ったのか、絢人先生は明るめな柔らかい声を奏でた。
「アイドル選手権の曲を作っているそうですね。生徒会長の東条くんから聞きましたよ。花園さんが一生懸命、曲を考えてくれているって」