クズとブスの恋愛事情。
太郎の様子を見ていた大地が
「あ!太郎子息は王族だから、同じ王族として挨拶しなきゃだな。ウダツ、一緒に行こうゼ!」
と、ハッとしたようにウダツを誘い、太郎(ミキ)の方へ急いだ。
そして、ちゃんと挨拶ができたようで、それからはお初にお目に掛かる太郎(ミキ)に社交辞令でも言ってるのか
側から見ると、ウダツと大地は太郎(ミキ)と初めて会ったとは思えない程打ち解けて笑い合ってもいた。
何気に陽毬とも話したらしく、太郎(ミキ)同様に陽毬ともとても楽しげに話をしている。
その内、豪乱と色っぽい美少年(シープ)も話に加わったせいか(豪乱の威圧感とあからさまなシープのお前らどっか行けよ!と、いう様な不届きな態度)に
そろそろお暇すると太郎(ミキ)の周りにへばりついていた老若男女も、流石に都合が悪くなりはけて行った。
今はミキ達6名で尽きない話をしている。
ただの挨拶だから、直ぐにこちらに戻って来ると思っていた大樹と真白だったが
全く戻って来る様子のない二人に呆れて、仕方ないとばかりに二人を迎えに行ったのだ。
理由は二つ。
大樹も同じ王族として挨拶しなければならない事。
そして、人が良過ぎるウダツと大地がうっかり太郎の毒牙に掛かってしまう前に助け出す為だ。
きっと、饒舌な彼の薄っぺらで嘘だらけの話をまともに聞いて二人はまんまと騙されている可能性が高い。
仕方のない二人だと、ヤレヤレと大樹と真白は肩をすくめ苦笑いしながら二人を迎えに行った。
大樹と真白の登場にいち早く気がついたミキは
「初めまして。苗字を明かせない事をお許し下さい。私の名前は“太郎”と、申します。」
と、見本の様な礼儀と立ち振る舞いを見せてきた。
遠くで見ていても、洗練されていると思っていたが間近で見ると、粗を探す方が難しいくらい上品で見事な礼儀作法であった。
文句の付け所がない。
自分達が想像していた事と違い過ぎて、少し困惑するも太郎(ミキ)に負けじと大樹と真白も挨拶を返した。
「お二人の“お噂”は、予々伺っております。」
と、にっこり人好きのする笑顔を大樹と真白に向けてきた。
自分達の噂?
…はて?
自分達は、太郎(ミキ)とは初対面で太郎の噂も何も知らないというのに、何故太郎は自分達の事を知っているのだろうか?
もしかして、親戚の集まりなどで会った事があるのか?
と、首を傾げる二人。
そこで、真白は太郎(ミキ)に腰を抱かれている陽毬を見た。太郎が陽毬をエスコートして会場に入って来た時から、かなり気になっていたのだ。
陽毬はある意味、参加者の十代の一部から注目されていた存在だから。
社交界の社会勉強と体験ができる年は10才からと決められているが、大半は12才ころから社会勉強の為参加する子供達が多い。
10才から社交界の勉強で来るのは、将来を約束されたエリートばかり。
中には自分の息子や娘の顔を早くに覚えてもらい、それぞれ目的は違えど誰か良い人に目を掛けてもらいたいという気持ちから参加させる親も多い。
陽毬は後者であり、10才の頃から社交界の勉強に強制参加させられていた。
最初の頃は、嫌だ嫌だと泣き車や会場の扉、柱にしがみ付き社交界体験を相当なまでに嫌がっていた。
そんな陽毬を両親はこっ酷く叱り、何回も強制的に連れて来られるうちに陽毬も諦めきった顔をしながら会場にくる様になっていた。
両親の目的はもちろん、陽毬の結婚相手探し。
陽毬の両親が周りにも話しているから、陽毬を連れて来る両親の事情をだいたいの人達は知っている。
“上の子達はいいんだが、末の娘の陽毬は何の取り柄もないどころか…あのとおり残念な容姿をしている。
だから、社交界がある度に娘を連れて来れば数打てば当たるというのか、その内娘を気に入ってくれる物好きが現れてくれると思いましてな。
そんな僅かな願いを込めて、娘を連れて来ている。”
そんな風に言われたら、娘に興味を持った“物好き”も寄るに寄れないだろうに。
誰だって、“物好き”とは言われたくない。だから、自然と遠ざかっていく。
それにも気付かず、いい親のフリして陽毬の事を誰か貰ってくれと宣伝する両親。
陽毬は、あの通り超のつく3桁を超えるデブで背も高い。
家も貧乏なので、ドレスは流行り遅れもいい所の陽毬の体格に合わせて作り直したリサイクルドレス。
アクセサリーなんてあってないも等しい。
厚底眼鏡を掛けているのが、より一層貧乏くささとダサさを引き出している。
眼鏡を外しても、顔の肉で顔のパーツが埋もれていてとても不細工だ。
まだ、明るい性格だったり気遣いができたり、人懐っこかったり愛嬌があったりと何かしら友達になりたそうな要素があれば
誰か、いい所のご令嬢の取り巻きにもなれただろうに。
彼女は、根暗で内気、極度の人見知りときた。
だから、誰も彼女に近づきたい“物好き”なんて何処にもおらず、いつも陽毬は身を隠すように一人隅っこに俯きながらウジウジ、ネチネチと突っ立っている。
正直、ウザいし気持ち悪いから消えてほしいのが周りの反応。
なので、そんな陽毬の前を通り過ぎる時にワザと嫌味を言ったり嘲笑ったりする人達も少なくない。
話が途切れたり暇になると、いい話題のネタとして陽毬の悪口を言いたい放題言って楽しんでる輩すらいる状態なのだ。
陽毬は悪口の格好のいい餌食なのだ。
みんなの嫌われ者、いい笑い者な陽毬。
そんな彼女が、何故か王族でしかも今まで見てきたイケメン達が霞む程の絶世と言っても過言ではない美丈夫にエスコートされて来るどころか
彼女の上から下まで全てに置いて、最新超人気な衣服や宝石、靴やオペラグローブ(レースの手袋)を身に付けていて
髪型やメイクさえも、最新の人気を取り入れている。
おそらく、この会場の王族夫人達よりは劣るが、かなり高額でありどれをとってもセンスのいいものばかりであった。
彼女にドレス一色を揃えてプレゼントした相手は、社交の場をよく知り尽くし敢えて王族や華族など相当な地位の方々の反感や嫉妬を避け
かつ、センスの良さを認めてあげる事ができる範囲にとどめているのが伺える。
…一体、誰が?
何の為に、彼女にこんなに労力とお金をかけたのだろう?
これは、何か裏があるとしか思えない。
と、真白は陽毬のドレスや装飾品、メイク、髪型など細部に渡っても全て、超一流品に身を纏っている事や王族にエスコートされる様を見て疑わずにはいられなかった。
しかも、陽毬の家族を見てもみんな貧乏が頑張って揃えたドレスやタキシードに身を包み取り巻きしている。
そんな家族達も、陽毬を見て目を丸くし固まってしまっているのだ。家族さえ知らなかったらしい。
「…太郎様。申し上げにくいのですが、どうしても気になる事を伺ってもよろしいでしょうか?」
と、ミキに真白が気になっていた事を聞こうと声を掛けた。すると
「そこまで、堅苦しくなくて大丈夫ですよ?私は、鷹司殿と白鳥嬢より年下なので。私は、ここに居る陽毬やウダツ君、大樹君と同い年の小学校6年生ですから。」
なんて、衝撃的な言葉が飛び出してきた。180cm近くある身長に、大人顔負けの立ち振る舞いをしていたので
てっきり、自分達より年上なのだとばかり思っていた。それが、まさかまだ小学6年生…12才だなんて!
そんな若さで、社会勉強の為の社交界体験ではあるが初めての社交界にして
こんなにも慣れた要素で、この場に馴染むなんて適応能力の才能がずば抜けてるとしか思えない。
将来の事を考えても、仕事の商談や会議等においてももスムーズに上手くこなせる逸材であろう。
素晴らしい才能だと大樹は考えていた。
大樹がそんな事を考え太郎(ミキ)への評価がすこぶる上がっている事など知るはずもない、真白は別の事が気になって仕方ない。
「失礼ですが、財前嬢とはどういった御関係なのですか?」
と、聞きたくてもなかなか聞き出しにくい話を振ってきた。そんな真白に
「…あれ?見て分かりませんか?
あからさま過ぎて分かりやすいかと思っていたのですが、私の彼女への恋人としての配慮が足りなかったようですね。
私と陽毬は、将来を誓い合った恋人同士です。」
その言葉には、大樹や真白だけでなく近くにいた人達も驚きを隠せず
「…え???」
「…は?」
「…ウソ…」
など、思わず声を出してしまう者が多くいた。大樹や真白もその内の一人である。
何かの冗談に違いない。
これは、陽毬を騙して遊んでるんじゃなじゃろうか?
あとになって、“うっそぴょーん”とかふざけた言葉と行動でゲラゲラ笑ってそうなイメージしか湧かない。
そんな馬鹿な!冗談にしても程があるだろ!と、大樹達はその事実を受け入れられずいると
「ふふっ!予想通りの反応過ぎて笑えちゃうんだけど。」
と、さっきから豪乱と口喧嘩している色っぽい美少年が、大樹や真白達を見て思わず声に出して笑っていた。
真白は思わず少し顰めっ面をしてしまい慌てて余裕のある表情を作り、大樹と共に色っぽい美少年を見ると
「…ふふ!ごめん、ごめん。僕の名前は、シープ。ベス王国の元皇太子だよ。
今はこの国に住む“僕のお嫁さん”の所に婿養子なったんだ。」
と、簡単に打ち明けるシープの正体に大樹と真白は酷く驚かされた。
薄っすら噂で聞いた事がある。ベス王国には世界でもトップクラスの美貌を誇る第五皇太子がいると。
彼は、魔道の天才にして魔道学に通じていて魔具の作りのスペシャリストだと聞いた事がある。
だから幼い頃から彼は色んな欲望達に狙われていたが、何と幼くとも自分の力だけでそれらを解決してきた猛者でもあるらしい。
女性寄りの中性的な容姿に、華奢でか弱そうなあまり守ってあげたいという庇護欲を掻き立てられる。
できるのなら今すぐにでも彼を自分の物にして、性的にたっぷりと自分好みに可愛がって囲いたい欲が湧いてくるような
今にも消えてしまいそうな儚さと妖艶さとが入り混じり男女問わず虜にしてしまいそうな魅力のある絶世の美少年だ。
そんな魅惑的な彼が異国で恋をして、王位を捨て幼くしてその女性と結婚したというのは有名な話だ。
まさか、その彼と会って話までできるとは思ってもなかった。
仕草や声までも可憐で、多くの美女達をに慣れた大樹でさえ彼に心を酔わせ
知らずのうちに、ポ〜…っとシープに身惚れてしまっていた。
それは、大樹だけではない。
真白も会場にいる誰もが、シープの美貌と色っぽさに釘付けであった。
「僕が婿養子に入った家の大家族の一人が、み……あ、太郎だ。
僕は太郎が幼い頃から、そこに居る豪乱と共に兄弟のように育ってきた。
太郎はどんなにしっかりした格好してもチャラそうな容姿のせいで、よく誤解されるが凄く真面目で良い子だって事は保証する。」
と、シープが話してる途中で
「そうなんだよなぁ〜。み、あ!み、いや…太郎な!
太郎の容姿と中身のギャップあり過ぎるから難儀だよな。その事でよく太郎は悩んで、
“こんな容姿に生まれたくなかった”
って、よく泣いてたもんな。
それもこれも全部ひっくるめて、み…太郎の魅力だって気づいてくれたのが、陽毬。そりゃ、太郎だって陽毬に惚れるだろ。その前に、幼稚園の入園式で陽毬に一目惚れして告ったんだっけか?」
豪乱が話に割って入ってきた。
「ちょっと!途中で割り込まないでくれる?最悪なんだけど!
それも太郎と陽毬は幼稚園の頃からの付き合いだ。幼なじみであり恋人だからこそ、お互いの事はよく知ってると思うよ。だから、太郎は陽毬に酷い事は絶対にしない。」
「そうそ!太郎は陽毬と自分の家族が何より大事だって言える様な思いやりのある奴だからな。」
そう豪乱が言った後だった。
シープは、大樹と真白を見て含み笑いを浮かべ
「太郎のギャップの話で言えば。大樹も裏表のギャップが激しいよね?
例えば面つらだけはいいから、周りからは素晴らしい評価ばかりの優等生。
だけど、裏では身分隠して魔具で変装までして犯罪スレスレの悪い遊びしながら、お酒やヤバイ薬でラリってるその場限りの美女たちとエ◯チしてばかりしてる。複数人で乱行までしてる常習犯。」
なんて、言うと
「それな!ビックリだよな。
それに大樹は令嬢に手出したら面倒だからって、わざわざ一般人の住むアパート借りてさ。
大樹の悪友達も巻き込んで一般人になりすまして、そこで気に入った美女を彼女にして恋人ごっこして楽しんでんのな?
しかも、かなりの飽き性なのか彼女が頻繁に変わってるし…。」
豪乱もシープの話に加わり、負けじとシープは今度は真白に狙いを定めて
「…あと、白鳥もね。裏表のギャップが驚く程激しいよね?
白鳥は気品溢れる清純ぶったように見せかけて、裏では悪質なイジメしたり気に入ったイケメンとエ◯チしまくってるなんて驚きだ。」
「白鳥の見た目や表向きの言動見てたら、信じられない話だよな!
不倫や浮気も楽しんで自分の体の開発にも貪欲で、背徳とスリルあるセ〇〇ス大好きなヤベー性癖の持ち主だからな?
白鳥の見た目や表向きの言動にコロッと騙される奴多いだろうな。
み…太郎とは逆パターンだな。」
と、豪乱は苦笑いしながらミキを見た。
「この会場で、ざっくり見回しても白鳥のセ〇レは10人くらい確認できる。
他のセ〇レ含めると何人いるのかな?
セ〇レの年齢の幅も広いのも驚きだ。下は12才〜上は73才までか。…今のところはだが。」
なんて、豪乱とシープは何気ない感じにとんでもない爆弾を投げ込み爆破させる会話をしていた。
その内容に、大地はドン引きしてウダツは苦笑いしている。
聞こえた周辺の人達は騒めき、一部顔色の悪い男性もチラホラいる。
最初豪乱が何の事を言っているのか頭の中で整理がつかず、理解できずいた大樹と真白だったが
徐々に内容を把握でき、全て言い切る前に豪乱とシープに
“それはデマ情報だ”
“違う、誰かと間違えているのでは?”
など、訂正の言葉を述べたかったが
自分達がハッと気がついた時には
既に、豪乱とシープが大樹と真白の裏の顔をザックリ喋り終わった後であった。
…だって自分は裏での悪さは、バレない様に念入りに計画を練りに練った完璧な方法だと自信があったからだ。
ここまでしなくても、と、いうほどまでに警戒に警戒を重ねて念には念を重ねて厳重に行ってきたスリル満点背徳だらけな危険な遊びなのだ。
バレるはずなどない絶対の自信があった。
それだけの自信があったからこそ、豪乱が言っている言葉に大樹と真白の頭がついて来れなかったのだ。
やっと、それは自分の事だと頭が理解した時には豪乱とシープがいいくらい喋った後だったという訳だ。
しかし、この話が本当なら…真白(大樹)ヤバ過ぎる…!!
と、互いが互いの内容を聞いて
“最低最悪のクズでどうしようもない。手におえないカス。…そんな事してたなんて、気持ち悪過ぎる。”
大樹と真白は、自分の事は棚に上げて互いにそんな風に思い嫌悪してしまった。
だが、真白は考えた。
彼らの話は事実ではあるけど、適当に喋ったデマカセの可能性がある。
それが、たまたま大正解してしまっただけで、彼らが本気で言ってるとは思えない。
だって、自分はバレない自信しかないから。バレる訳がないくらいに厳重に厳重を重ねてセ◯レ達と、スリルを楽しんでるのだから。
その為の一つに、悪事を揉み消せるだけの地位や権力・発言力のある老人数人とまで体の関係を持っているのだし。
だから、絶対にバレない。
そう思い直した真白は、自信たっぷりに
「申し訳ありませんが、その様な事実は一切ございません。
何処からその様なデマが流れたのか不思議でなりませんし、例え冗談であってもそんなデタラメな話をされたらかなり不快に思います。
周りの方々に誤解でもされたら、あなた方はどう責任を取るつもりなのですか?」
手厳しく豪乱とシープに怒りをあらわにしたのだが…あれ?と、思った。
だって、こんな事を言われて真白が強く否定したら大樹も同じように、あの二人を強く叱りつけてくれると思ったのに肝心要の大樹は無言だ。
いつもなら何かあれば、上手い具合に立ち回って事を治めてくれる大樹なのに。
おかしく感じた真白は、隣に居る大樹をチラリを見上げると
…ギョッ!!?
頼りにしていた大樹の顔色は真っ青で固まっていた。そんな様子の大樹に不安を感じるも
「…大樹、大丈夫?こんな何の根拠も証拠もないデマ言われたら、誰だって驚いて固まっちゃうわ。
私達には絶対にあり得ない話を、私達の前で堂々と話すなんて愚かな行為だと思います!」
と、勇敢にも豪乱とシープに喰ってかかるが
「……めろ。」
震えた小さな声で、真白がこれ以上彼らを怒らせるような言葉を掛けないように静止する大樹の声が聞こえた。
「…え?…でも、こんな有りもしない事実をこのままにして置けないわ!周りの人達に誤解されたら大変だもの!」
真白は自分の潔白をここで晴らさなければ、今後ずっとこのとんでもない噂が社交界に流れ自分の立場を大いに脅やかし悪化する一方になる。
そりゃ、もう…
【大悪女】と、呼ばれてもおかしくない状況となる。
それは、かなり不味い。
一刻も早く、それを阻止しなければ社交の場どころか自分や家族の今まで築き上げた人間関係や名誉が危ない。家柄にも大きく傷が付く。
なのに、大樹のこの反応は何なのだろう?
と、不可解に思っていると
「……この事は、“ショウちゃん”も知っていますか?」
青ざめるを通り越して真っ白な顔の大樹は、声を出すのもやっとの事で少し掠れた様な声で豪乱に聞いた。
すると、豪乱は
「何で、俺が“ここに居て”“こんな話”をしてると思う?」
意味ありげな事だけ言って肩をすくめ少し笑い、だけど目の奥では怒りも滲んでいるようにも見える。
「……つ、潰そうとしているのです…か?…私の事を…」
口を震わせ、豪乱に訊ねる大樹を見て真白は何か不味い事になっているのでは?と、勘づき始めていたが
何故、同い年くらいの豪乱にこうも怯えているのか?豪乱は、大樹と同じ王族で対等の立場ではないのか?などと、疑問しか浮かばない。
「いや、潰しはしない。だが、大樹お前は“ショウ様の大切な親友である陽毬”を“自分の悪い遊びのターゲットにした”。そこが、運のつきだ。」
と、いう豪乱の言葉に
「……え?財前嬢が、ショウちゃんの“親友”?」
大樹は驚愕の表情を浮かべ、恐る恐る陽毬を見た。
「だからさ。社交界に参加しなくていいオレが動いたの。だって、大事な恋人のピンチじゃん?彼ピッピのオレが動かなきゃだよねー。」
なんて、いきなりお調子者でチャラそうな喋り方と口調で、急にヘラヘラしてきた太郎(ミキ)にも驚きつつ
「そういう事。ショウの大家族の一人である太郎(ミキ)の恋人にして、ショウの親友である陽毬を虐めようと画策した時点で君は終わってたって事。」
シープに大樹の憂さ晴らしの為の計画もバッサリと斬られ
「けど、良かったじゃん!
虐めようとしてたってだけで、“まだ、実際には動いてない”んだからさ。
それを事前に食い止める為に、オレが今回の社交界に来たんだからさ。
…けど、オレの大切な恋人を虐めのターゲットにしようとしてたってだけで、オレは大樹君を許せないけどさ。」
さっきまでチャラチャラヘラヘラしてた太郎(ミキ)が、急に真剣な表情になって大樹を睨むと一気に空気が変わり、大樹は太郎(ミキ)の威圧感で腰を抜かしそうになった。
「まあな。大樹が陽毬を虐める前に食い止められたら、大樹を“候補”から外さないってショウも言ってたし。それだけでも良かったな。命拾いしたな。」
そう言った豪乱は苦笑いしている。
「“誰だって、良いとこと悪いとこはいっぱいあるの。
だけど、【悪いとこのどれか】が、人を傷付ける様なとってもとっても酷い事だったら。相手に恨まれる様な許されない悪い事したなら良くないって思う。
大樹くんは、それに当てはまる悪い事してる。
だけど大樹くん、まだまだ若いし悪い事をよく分かってないかもしれない。
頭で分かってるつもりでも本当の意味でに理解してないかも。大したことないとか、深く考える事すらできないのかな?
だったら、大樹くんのしてる【人の道を逸れた悪い事が周りの人達の反応や今後どういった影響を受ける】か。大樹くんの身をもって教えてあげて?
それが、今までの大樹くんの悪い事に対しての【許し】だよ。
もし、これを拒んだり、今後周りの人達からの反応や態度で根をあげたら助けてあげる代わりに【候補から外す】ね。
それだけの事を大樹くんはしたの。
…私、怒ってるんだからね!”
ってさ。大樹へ、うちの子からの伝言。」
豪乱に続き口を開いたシープは、ショウの口真似と行動まで真似たせいで陽毬とミキ、豪乱、大地はソックリだと思わず吹き出してしまったが
内容が内容なだけに、シープの言い放ったショウの事をうちの子発言はツッコミどこであったが、みんなそれを気にしてる余裕はなく
すぐに真顔になり深刻そうな表情に変わった。
「あ、白鳥(真白)の事も大樹のついでなんかじゃないからな?
“ある方”が、自分と魂を分け合う弟のウダツ様を
“自分を良く見せる為の都合のいい道具として側に置き、口では偽善ぶった言葉をほざく。
だが、実際にはウダツに酷い扱いをして
[底辺がこの私様と一緒に居られるだけでも大喜びでしょ。]
[この私様を好きにならない男なんて存在しないわ。ウダツも私様を好きに決まってる。]
[その気持ちを利用して、私を巡って大樹とウダツの幼なじみの三角関係の切ない恋をしばらく楽しみたいわ。]
[きっと大樹の事だから、私の事が好きでもウダツが私の事を好きだって知ったら、きっとウダツなんかの為に遠慮して私と恋人になろうとは思わないかもしれないわ。]
[だから、ウダツを上手く利用して私と大樹の恋へのいいスパイスになってもらって、私と大樹は燃え上がるような恋をして無事恋人になって結婚する。
私と大樹が結婚したら、周りの人達の憧れや渇望、羨む姿が目に浮かぶ様だわ。]
ってさ。ウダツ様を自分の都合のいいオモチャ或いは道具としか思ってない白鳥(真白)に、心底腹を立てているお偉い様がいてな。
ショウの大樹への【許し】の条件を聞いて、その方もそれに乗っかったんだよ。
その方が言うには
“俺の大切な分身を何だと思っている!
白鳥(真白)に永遠の命を与え永遠に地獄の様な拷問を与え続けてやりたい気持ちだ。
俺が直接に白鳥(真白)と向き合えば怒りと衝動でそうなりかねない。”
“だが、それはやり過ぎな事も理解している。だが、やりかねない。それくらいに俺は白鳥(真白)が憎くて憎くてしょうがない。”
“だから、俺の怒りが直接白鳥(真白)に向かわないよう、ショウの【許し】と同じ内容を白鳥(真白)に求める。”
って、命令されたからな。」
何で主以外の命令まで聞かなきゃいけないんだ。と、ブツクサ言っている豪乱に
「人助けって思えばこそ、お前が動いたのだろ?意外と情に脆いよね、お前は。」
と、シープはおかしそうにクスクス笑っている。
「…し、仕方ないだろ!ショウが
“え!?永遠に拷問!!!?やめてあげて?白鳥さんを助けてあげて?”
って、今にもぶっ倒れそうに青ざめながらこっち見てくんだからさ。断れる訳ないよな。…ハア…。」
なんて、会話を聞く限り
大樹と真白は永遠の地獄から、人生のドン底に落とされ最悪になる未来に変わり…マシになったようだ。
だが、あくまで永遠の地獄に比べればの話だ。
実際二人の置かれている立場はまさに、これから生き地獄へとまっしぐらになろうとしているのだから。
「あ!太郎子息は王族だから、同じ王族として挨拶しなきゃだな。ウダツ、一緒に行こうゼ!」
と、ハッとしたようにウダツを誘い、太郎(ミキ)の方へ急いだ。
そして、ちゃんと挨拶ができたようで、それからはお初にお目に掛かる太郎(ミキ)に社交辞令でも言ってるのか
側から見ると、ウダツと大地は太郎(ミキ)と初めて会ったとは思えない程打ち解けて笑い合ってもいた。
何気に陽毬とも話したらしく、太郎(ミキ)同様に陽毬ともとても楽しげに話をしている。
その内、豪乱と色っぽい美少年(シープ)も話に加わったせいか(豪乱の威圧感とあからさまなシープのお前らどっか行けよ!と、いう様な不届きな態度)に
そろそろお暇すると太郎(ミキ)の周りにへばりついていた老若男女も、流石に都合が悪くなりはけて行った。
今はミキ達6名で尽きない話をしている。
ただの挨拶だから、直ぐにこちらに戻って来ると思っていた大樹と真白だったが
全く戻って来る様子のない二人に呆れて、仕方ないとばかりに二人を迎えに行ったのだ。
理由は二つ。
大樹も同じ王族として挨拶しなければならない事。
そして、人が良過ぎるウダツと大地がうっかり太郎の毒牙に掛かってしまう前に助け出す為だ。
きっと、饒舌な彼の薄っぺらで嘘だらけの話をまともに聞いて二人はまんまと騙されている可能性が高い。
仕方のない二人だと、ヤレヤレと大樹と真白は肩をすくめ苦笑いしながら二人を迎えに行った。
大樹と真白の登場にいち早く気がついたミキは
「初めまして。苗字を明かせない事をお許し下さい。私の名前は“太郎”と、申します。」
と、見本の様な礼儀と立ち振る舞いを見せてきた。
遠くで見ていても、洗練されていると思っていたが間近で見ると、粗を探す方が難しいくらい上品で見事な礼儀作法であった。
文句の付け所がない。
自分達が想像していた事と違い過ぎて、少し困惑するも太郎(ミキ)に負けじと大樹と真白も挨拶を返した。
「お二人の“お噂”は、予々伺っております。」
と、にっこり人好きのする笑顔を大樹と真白に向けてきた。
自分達の噂?
…はて?
自分達は、太郎(ミキ)とは初対面で太郎の噂も何も知らないというのに、何故太郎は自分達の事を知っているのだろうか?
もしかして、親戚の集まりなどで会った事があるのか?
と、首を傾げる二人。
そこで、真白は太郎(ミキ)に腰を抱かれている陽毬を見た。太郎が陽毬をエスコートして会場に入って来た時から、かなり気になっていたのだ。
陽毬はある意味、参加者の十代の一部から注目されていた存在だから。
社交界の社会勉強と体験ができる年は10才からと決められているが、大半は12才ころから社会勉強の為参加する子供達が多い。
10才から社交界の勉強で来るのは、将来を約束されたエリートばかり。
中には自分の息子や娘の顔を早くに覚えてもらい、それぞれ目的は違えど誰か良い人に目を掛けてもらいたいという気持ちから参加させる親も多い。
陽毬は後者であり、10才の頃から社交界の勉強に強制参加させられていた。
最初の頃は、嫌だ嫌だと泣き車や会場の扉、柱にしがみ付き社交界体験を相当なまでに嫌がっていた。
そんな陽毬を両親はこっ酷く叱り、何回も強制的に連れて来られるうちに陽毬も諦めきった顔をしながら会場にくる様になっていた。
両親の目的はもちろん、陽毬の結婚相手探し。
陽毬の両親が周りにも話しているから、陽毬を連れて来る両親の事情をだいたいの人達は知っている。
“上の子達はいいんだが、末の娘の陽毬は何の取り柄もないどころか…あのとおり残念な容姿をしている。
だから、社交界がある度に娘を連れて来れば数打てば当たるというのか、その内娘を気に入ってくれる物好きが現れてくれると思いましてな。
そんな僅かな願いを込めて、娘を連れて来ている。”
そんな風に言われたら、娘に興味を持った“物好き”も寄るに寄れないだろうに。
誰だって、“物好き”とは言われたくない。だから、自然と遠ざかっていく。
それにも気付かず、いい親のフリして陽毬の事を誰か貰ってくれと宣伝する両親。
陽毬は、あの通り超のつく3桁を超えるデブで背も高い。
家も貧乏なので、ドレスは流行り遅れもいい所の陽毬の体格に合わせて作り直したリサイクルドレス。
アクセサリーなんてあってないも等しい。
厚底眼鏡を掛けているのが、より一層貧乏くささとダサさを引き出している。
眼鏡を外しても、顔の肉で顔のパーツが埋もれていてとても不細工だ。
まだ、明るい性格だったり気遣いができたり、人懐っこかったり愛嬌があったりと何かしら友達になりたそうな要素があれば
誰か、いい所のご令嬢の取り巻きにもなれただろうに。
彼女は、根暗で内気、極度の人見知りときた。
だから、誰も彼女に近づきたい“物好き”なんて何処にもおらず、いつも陽毬は身を隠すように一人隅っこに俯きながらウジウジ、ネチネチと突っ立っている。
正直、ウザいし気持ち悪いから消えてほしいのが周りの反応。
なので、そんな陽毬の前を通り過ぎる時にワザと嫌味を言ったり嘲笑ったりする人達も少なくない。
話が途切れたり暇になると、いい話題のネタとして陽毬の悪口を言いたい放題言って楽しんでる輩すらいる状態なのだ。
陽毬は悪口の格好のいい餌食なのだ。
みんなの嫌われ者、いい笑い者な陽毬。
そんな彼女が、何故か王族でしかも今まで見てきたイケメン達が霞む程の絶世と言っても過言ではない美丈夫にエスコートされて来るどころか
彼女の上から下まで全てに置いて、最新超人気な衣服や宝石、靴やオペラグローブ(レースの手袋)を身に付けていて
髪型やメイクさえも、最新の人気を取り入れている。
おそらく、この会場の王族夫人達よりは劣るが、かなり高額でありどれをとってもセンスのいいものばかりであった。
彼女にドレス一色を揃えてプレゼントした相手は、社交の場をよく知り尽くし敢えて王族や華族など相当な地位の方々の反感や嫉妬を避け
かつ、センスの良さを認めてあげる事ができる範囲にとどめているのが伺える。
…一体、誰が?
何の為に、彼女にこんなに労力とお金をかけたのだろう?
これは、何か裏があるとしか思えない。
と、真白は陽毬のドレスや装飾品、メイク、髪型など細部に渡っても全て、超一流品に身を纏っている事や王族にエスコートされる様を見て疑わずにはいられなかった。
しかも、陽毬の家族を見てもみんな貧乏が頑張って揃えたドレスやタキシードに身を包み取り巻きしている。
そんな家族達も、陽毬を見て目を丸くし固まってしまっているのだ。家族さえ知らなかったらしい。
「…太郎様。申し上げにくいのですが、どうしても気になる事を伺ってもよろしいでしょうか?」
と、ミキに真白が気になっていた事を聞こうと声を掛けた。すると
「そこまで、堅苦しくなくて大丈夫ですよ?私は、鷹司殿と白鳥嬢より年下なので。私は、ここに居る陽毬やウダツ君、大樹君と同い年の小学校6年生ですから。」
なんて、衝撃的な言葉が飛び出してきた。180cm近くある身長に、大人顔負けの立ち振る舞いをしていたので
てっきり、自分達より年上なのだとばかり思っていた。それが、まさかまだ小学6年生…12才だなんて!
そんな若さで、社会勉強の為の社交界体験ではあるが初めての社交界にして
こんなにも慣れた要素で、この場に馴染むなんて適応能力の才能がずば抜けてるとしか思えない。
将来の事を考えても、仕事の商談や会議等においてももスムーズに上手くこなせる逸材であろう。
素晴らしい才能だと大樹は考えていた。
大樹がそんな事を考え太郎(ミキ)への評価がすこぶる上がっている事など知るはずもない、真白は別の事が気になって仕方ない。
「失礼ですが、財前嬢とはどういった御関係なのですか?」
と、聞きたくてもなかなか聞き出しにくい話を振ってきた。そんな真白に
「…あれ?見て分かりませんか?
あからさま過ぎて分かりやすいかと思っていたのですが、私の彼女への恋人としての配慮が足りなかったようですね。
私と陽毬は、将来を誓い合った恋人同士です。」
その言葉には、大樹や真白だけでなく近くにいた人達も驚きを隠せず
「…え???」
「…は?」
「…ウソ…」
など、思わず声を出してしまう者が多くいた。大樹や真白もその内の一人である。
何かの冗談に違いない。
これは、陽毬を騙して遊んでるんじゃなじゃろうか?
あとになって、“うっそぴょーん”とかふざけた言葉と行動でゲラゲラ笑ってそうなイメージしか湧かない。
そんな馬鹿な!冗談にしても程があるだろ!と、大樹達はその事実を受け入れられずいると
「ふふっ!予想通りの反応過ぎて笑えちゃうんだけど。」
と、さっきから豪乱と口喧嘩している色っぽい美少年が、大樹や真白達を見て思わず声に出して笑っていた。
真白は思わず少し顰めっ面をしてしまい慌てて余裕のある表情を作り、大樹と共に色っぽい美少年を見ると
「…ふふ!ごめん、ごめん。僕の名前は、シープ。ベス王国の元皇太子だよ。
今はこの国に住む“僕のお嫁さん”の所に婿養子なったんだ。」
と、簡単に打ち明けるシープの正体に大樹と真白は酷く驚かされた。
薄っすら噂で聞いた事がある。ベス王国には世界でもトップクラスの美貌を誇る第五皇太子がいると。
彼は、魔道の天才にして魔道学に通じていて魔具の作りのスペシャリストだと聞いた事がある。
だから幼い頃から彼は色んな欲望達に狙われていたが、何と幼くとも自分の力だけでそれらを解決してきた猛者でもあるらしい。
女性寄りの中性的な容姿に、華奢でか弱そうなあまり守ってあげたいという庇護欲を掻き立てられる。
できるのなら今すぐにでも彼を自分の物にして、性的にたっぷりと自分好みに可愛がって囲いたい欲が湧いてくるような
今にも消えてしまいそうな儚さと妖艶さとが入り混じり男女問わず虜にしてしまいそうな魅力のある絶世の美少年だ。
そんな魅惑的な彼が異国で恋をして、王位を捨て幼くしてその女性と結婚したというのは有名な話だ。
まさか、その彼と会って話までできるとは思ってもなかった。
仕草や声までも可憐で、多くの美女達をに慣れた大樹でさえ彼に心を酔わせ
知らずのうちに、ポ〜…っとシープに身惚れてしまっていた。
それは、大樹だけではない。
真白も会場にいる誰もが、シープの美貌と色っぽさに釘付けであった。
「僕が婿養子に入った家の大家族の一人が、み……あ、太郎だ。
僕は太郎が幼い頃から、そこに居る豪乱と共に兄弟のように育ってきた。
太郎はどんなにしっかりした格好してもチャラそうな容姿のせいで、よく誤解されるが凄く真面目で良い子だって事は保証する。」
と、シープが話してる途中で
「そうなんだよなぁ〜。み、あ!み、いや…太郎な!
太郎の容姿と中身のギャップあり過ぎるから難儀だよな。その事でよく太郎は悩んで、
“こんな容姿に生まれたくなかった”
って、よく泣いてたもんな。
それもこれも全部ひっくるめて、み…太郎の魅力だって気づいてくれたのが、陽毬。そりゃ、太郎だって陽毬に惚れるだろ。その前に、幼稚園の入園式で陽毬に一目惚れして告ったんだっけか?」
豪乱が話に割って入ってきた。
「ちょっと!途中で割り込まないでくれる?最悪なんだけど!
それも太郎と陽毬は幼稚園の頃からの付き合いだ。幼なじみであり恋人だからこそ、お互いの事はよく知ってると思うよ。だから、太郎は陽毬に酷い事は絶対にしない。」
「そうそ!太郎は陽毬と自分の家族が何より大事だって言える様な思いやりのある奴だからな。」
そう豪乱が言った後だった。
シープは、大樹と真白を見て含み笑いを浮かべ
「太郎のギャップの話で言えば。大樹も裏表のギャップが激しいよね?
例えば面つらだけはいいから、周りからは素晴らしい評価ばかりの優等生。
だけど、裏では身分隠して魔具で変装までして犯罪スレスレの悪い遊びしながら、お酒やヤバイ薬でラリってるその場限りの美女たちとエ◯チしてばかりしてる。複数人で乱行までしてる常習犯。」
なんて、言うと
「それな!ビックリだよな。
それに大樹は令嬢に手出したら面倒だからって、わざわざ一般人の住むアパート借りてさ。
大樹の悪友達も巻き込んで一般人になりすまして、そこで気に入った美女を彼女にして恋人ごっこして楽しんでんのな?
しかも、かなりの飽き性なのか彼女が頻繁に変わってるし…。」
豪乱もシープの話に加わり、負けじとシープは今度は真白に狙いを定めて
「…あと、白鳥もね。裏表のギャップが驚く程激しいよね?
白鳥は気品溢れる清純ぶったように見せかけて、裏では悪質なイジメしたり気に入ったイケメンとエ◯チしまくってるなんて驚きだ。」
「白鳥の見た目や表向きの言動見てたら、信じられない話だよな!
不倫や浮気も楽しんで自分の体の開発にも貪欲で、背徳とスリルあるセ〇〇ス大好きなヤベー性癖の持ち主だからな?
白鳥の見た目や表向きの言動にコロッと騙される奴多いだろうな。
み…太郎とは逆パターンだな。」
と、豪乱は苦笑いしながらミキを見た。
「この会場で、ざっくり見回しても白鳥のセ〇レは10人くらい確認できる。
他のセ〇レ含めると何人いるのかな?
セ〇レの年齢の幅も広いのも驚きだ。下は12才〜上は73才までか。…今のところはだが。」
なんて、豪乱とシープは何気ない感じにとんでもない爆弾を投げ込み爆破させる会話をしていた。
その内容に、大地はドン引きしてウダツは苦笑いしている。
聞こえた周辺の人達は騒めき、一部顔色の悪い男性もチラホラいる。
最初豪乱が何の事を言っているのか頭の中で整理がつかず、理解できずいた大樹と真白だったが
徐々に内容を把握でき、全て言い切る前に豪乱とシープに
“それはデマ情報だ”
“違う、誰かと間違えているのでは?”
など、訂正の言葉を述べたかったが
自分達がハッと気がついた時には
既に、豪乱とシープが大樹と真白の裏の顔をザックリ喋り終わった後であった。
…だって自分は裏での悪さは、バレない様に念入りに計画を練りに練った完璧な方法だと自信があったからだ。
ここまでしなくても、と、いうほどまでに警戒に警戒を重ねて念には念を重ねて厳重に行ってきたスリル満点背徳だらけな危険な遊びなのだ。
バレるはずなどない絶対の自信があった。
それだけの自信があったからこそ、豪乱が言っている言葉に大樹と真白の頭がついて来れなかったのだ。
やっと、それは自分の事だと頭が理解した時には豪乱とシープがいいくらい喋った後だったという訳だ。
しかし、この話が本当なら…真白(大樹)ヤバ過ぎる…!!
と、互いが互いの内容を聞いて
“最低最悪のクズでどうしようもない。手におえないカス。…そんな事してたなんて、気持ち悪過ぎる。”
大樹と真白は、自分の事は棚に上げて互いにそんな風に思い嫌悪してしまった。
だが、真白は考えた。
彼らの話は事実ではあるけど、適当に喋ったデマカセの可能性がある。
それが、たまたま大正解してしまっただけで、彼らが本気で言ってるとは思えない。
だって、自分はバレない自信しかないから。バレる訳がないくらいに厳重に厳重を重ねてセ◯レ達と、スリルを楽しんでるのだから。
その為の一つに、悪事を揉み消せるだけの地位や権力・発言力のある老人数人とまで体の関係を持っているのだし。
だから、絶対にバレない。
そう思い直した真白は、自信たっぷりに
「申し訳ありませんが、その様な事実は一切ございません。
何処からその様なデマが流れたのか不思議でなりませんし、例え冗談であってもそんなデタラメな話をされたらかなり不快に思います。
周りの方々に誤解でもされたら、あなた方はどう責任を取るつもりなのですか?」
手厳しく豪乱とシープに怒りをあらわにしたのだが…あれ?と、思った。
だって、こんな事を言われて真白が強く否定したら大樹も同じように、あの二人を強く叱りつけてくれると思ったのに肝心要の大樹は無言だ。
いつもなら何かあれば、上手い具合に立ち回って事を治めてくれる大樹なのに。
おかしく感じた真白は、隣に居る大樹をチラリを見上げると
…ギョッ!!?
頼りにしていた大樹の顔色は真っ青で固まっていた。そんな様子の大樹に不安を感じるも
「…大樹、大丈夫?こんな何の根拠も証拠もないデマ言われたら、誰だって驚いて固まっちゃうわ。
私達には絶対にあり得ない話を、私達の前で堂々と話すなんて愚かな行為だと思います!」
と、勇敢にも豪乱とシープに喰ってかかるが
「……めろ。」
震えた小さな声で、真白がこれ以上彼らを怒らせるような言葉を掛けないように静止する大樹の声が聞こえた。
「…え?…でも、こんな有りもしない事実をこのままにして置けないわ!周りの人達に誤解されたら大変だもの!」
真白は自分の潔白をここで晴らさなければ、今後ずっとこのとんでもない噂が社交界に流れ自分の立場を大いに脅やかし悪化する一方になる。
そりゃ、もう…
【大悪女】と、呼ばれてもおかしくない状況となる。
それは、かなり不味い。
一刻も早く、それを阻止しなければ社交の場どころか自分や家族の今まで築き上げた人間関係や名誉が危ない。家柄にも大きく傷が付く。
なのに、大樹のこの反応は何なのだろう?
と、不可解に思っていると
「……この事は、“ショウちゃん”も知っていますか?」
青ざめるを通り越して真っ白な顔の大樹は、声を出すのもやっとの事で少し掠れた様な声で豪乱に聞いた。
すると、豪乱は
「何で、俺が“ここに居て”“こんな話”をしてると思う?」
意味ありげな事だけ言って肩をすくめ少し笑い、だけど目の奥では怒りも滲んでいるようにも見える。
「……つ、潰そうとしているのです…か?…私の事を…」
口を震わせ、豪乱に訊ねる大樹を見て真白は何か不味い事になっているのでは?と、勘づき始めていたが
何故、同い年くらいの豪乱にこうも怯えているのか?豪乱は、大樹と同じ王族で対等の立場ではないのか?などと、疑問しか浮かばない。
「いや、潰しはしない。だが、大樹お前は“ショウ様の大切な親友である陽毬”を“自分の悪い遊びのターゲットにした”。そこが、運のつきだ。」
と、いう豪乱の言葉に
「……え?財前嬢が、ショウちゃんの“親友”?」
大樹は驚愕の表情を浮かべ、恐る恐る陽毬を見た。
「だからさ。社交界に参加しなくていいオレが動いたの。だって、大事な恋人のピンチじゃん?彼ピッピのオレが動かなきゃだよねー。」
なんて、いきなりお調子者でチャラそうな喋り方と口調で、急にヘラヘラしてきた太郎(ミキ)にも驚きつつ
「そういう事。ショウの大家族の一人である太郎(ミキ)の恋人にして、ショウの親友である陽毬を虐めようと画策した時点で君は終わってたって事。」
シープに大樹の憂さ晴らしの為の計画もバッサリと斬られ
「けど、良かったじゃん!
虐めようとしてたってだけで、“まだ、実際には動いてない”んだからさ。
それを事前に食い止める為に、オレが今回の社交界に来たんだからさ。
…けど、オレの大切な恋人を虐めのターゲットにしようとしてたってだけで、オレは大樹君を許せないけどさ。」
さっきまでチャラチャラヘラヘラしてた太郎(ミキ)が、急に真剣な表情になって大樹を睨むと一気に空気が変わり、大樹は太郎(ミキ)の威圧感で腰を抜かしそうになった。
「まあな。大樹が陽毬を虐める前に食い止められたら、大樹を“候補”から外さないってショウも言ってたし。それだけでも良かったな。命拾いしたな。」
そう言った豪乱は苦笑いしている。
「“誰だって、良いとこと悪いとこはいっぱいあるの。
だけど、【悪いとこのどれか】が、人を傷付ける様なとってもとっても酷い事だったら。相手に恨まれる様な許されない悪い事したなら良くないって思う。
大樹くんは、それに当てはまる悪い事してる。
だけど大樹くん、まだまだ若いし悪い事をよく分かってないかもしれない。
頭で分かってるつもりでも本当の意味でに理解してないかも。大したことないとか、深く考える事すらできないのかな?
だったら、大樹くんのしてる【人の道を逸れた悪い事が周りの人達の反応や今後どういった影響を受ける】か。大樹くんの身をもって教えてあげて?
それが、今までの大樹くんの悪い事に対しての【許し】だよ。
もし、これを拒んだり、今後周りの人達からの反応や態度で根をあげたら助けてあげる代わりに【候補から外す】ね。
それだけの事を大樹くんはしたの。
…私、怒ってるんだからね!”
ってさ。大樹へ、うちの子からの伝言。」
豪乱に続き口を開いたシープは、ショウの口真似と行動まで真似たせいで陽毬とミキ、豪乱、大地はソックリだと思わず吹き出してしまったが
内容が内容なだけに、シープの言い放ったショウの事をうちの子発言はツッコミどこであったが、みんなそれを気にしてる余裕はなく
すぐに真顔になり深刻そうな表情に変わった。
「あ、白鳥(真白)の事も大樹のついでなんかじゃないからな?
“ある方”が、自分と魂を分け合う弟のウダツ様を
“自分を良く見せる為の都合のいい道具として側に置き、口では偽善ぶった言葉をほざく。
だが、実際にはウダツに酷い扱いをして
[底辺がこの私様と一緒に居られるだけでも大喜びでしょ。]
[この私様を好きにならない男なんて存在しないわ。ウダツも私様を好きに決まってる。]
[その気持ちを利用して、私を巡って大樹とウダツの幼なじみの三角関係の切ない恋をしばらく楽しみたいわ。]
[きっと大樹の事だから、私の事が好きでもウダツが私の事を好きだって知ったら、きっとウダツなんかの為に遠慮して私と恋人になろうとは思わないかもしれないわ。]
[だから、ウダツを上手く利用して私と大樹の恋へのいいスパイスになってもらって、私と大樹は燃え上がるような恋をして無事恋人になって結婚する。
私と大樹が結婚したら、周りの人達の憧れや渇望、羨む姿が目に浮かぶ様だわ。]
ってさ。ウダツ様を自分の都合のいいオモチャ或いは道具としか思ってない白鳥(真白)に、心底腹を立てているお偉い様がいてな。
ショウの大樹への【許し】の条件を聞いて、その方もそれに乗っかったんだよ。
その方が言うには
“俺の大切な分身を何だと思っている!
白鳥(真白)に永遠の命を与え永遠に地獄の様な拷問を与え続けてやりたい気持ちだ。
俺が直接に白鳥(真白)と向き合えば怒りと衝動でそうなりかねない。”
“だが、それはやり過ぎな事も理解している。だが、やりかねない。それくらいに俺は白鳥(真白)が憎くて憎くてしょうがない。”
“だから、俺の怒りが直接白鳥(真白)に向かわないよう、ショウの【許し】と同じ内容を白鳥(真白)に求める。”
って、命令されたからな。」
何で主以外の命令まで聞かなきゃいけないんだ。と、ブツクサ言っている豪乱に
「人助けって思えばこそ、お前が動いたのだろ?意外と情に脆いよね、お前は。」
と、シープはおかしそうにクスクス笑っている。
「…し、仕方ないだろ!ショウが
“え!?永遠に拷問!!!?やめてあげて?白鳥さんを助けてあげて?”
って、今にもぶっ倒れそうに青ざめながらこっち見てくんだからさ。断れる訳ないよな。…ハア…。」
なんて、会話を聞く限り
大樹と真白は永遠の地獄から、人生のドン底に落とされ最悪になる未来に変わり…マシになったようだ。
だが、あくまで永遠の地獄に比べればの話だ。
実際二人の置かれている立場はまさに、これから生き地獄へとまっしぐらになろうとしているのだから。