晴れない空の恋心
キーンコーンカーンコーン

いつのまにか放課後になり、今から未那と下校。そんなとき、

「紗奈!一緒に帰ろう。」

振り向かなくたって、声を聞けば分かる。憧れの、1番信頼してる先輩。

「二葉くん!」

二葉くんが誘ってくれるなんて珍しい。今日は部活ないのかな。

「あ、でも未那と帰る約束してたの。ごめんね」

「えっ、私はいいよ、二葉先輩と帰って!私は遊と帰るから!」

「えっ、あっ、ちょ!!」

あたふたしている私を見てクスッと二葉くんが笑った。そして、いきなり手を繋いできた。

「じゃあ、帰ろっか。」

「…は、い。」

歩きながら二葉くんは心配そうな顔をする。
「足、どうしたの?これ包帯?」

「あ、えっと…」

出来るだけ香菜先輩のことは言いたくない。

「あの、転んだの!未那にドジって笑われちゃったよ笑」

すると真剣な顔で言った。

「転んでもこんなふうにならないと思うけど?」

「うっ」

「隠し事しないで。紗奈のことは全部知りたい。それでも、だめ?」

子犬みたいに首をかしげる二葉くんが恋しい。言いたいよ。私も二葉くんの全部知りたい。そんな私に嘘をつくなんか無理で。

「えっと…実は…香菜先輩に押されて…」

「…香菜に?」

「うん、」

少し黙って考える二葉くん。

「香菜そんなことするやつじゃないよ。」

そう、はっきり言った。

「えっ、」

「優しくて、ドジで、天然な香奈がそんなことするかな。」

分かってた。信じてくれないことなんか。知ってた。

知ってたことなのに。やばい、泣きそう。
< 16 / 65 >

この作品をシェア

pagetop