極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
けれど、本当は嬉しかった。
樹くんが『結婚しよう』なんて言い出したときには、驚きや困惑が芽生えたのと同時に、心の奥底では浮かれた気持ちもあった。


「結婚するって決めたのだって、そういう気持ちが少なからずあったからで……」


恋心を自覚したのは、もっとあとのことだけれど……。きっと、あの夜に私の初恋は再び動き出していた。


「でも、一緒に住むようになって、どんどん意識しちゃって……。諦めたはずの初恋を思い出して、本当は苦しかった。ただ、そんなのは自業自得だし、いつかは離婚するんだって思ってたから……」


だから、彼に抱かれるたびに嬉しくて……。そして、次第に同じくらい苦しくなっていった。


「俺たち、お互いに誤解し合ってたのか……。でも、俺が最初からきちんと本心を伝えてれば、芽衣を傷つけることもなかったんだよな。本当にごめん……」

「ううん……。私だって、本音を言えなかったから……」


お互いを見つめ合ったまま、ふと苦笑を漏らした。
情けなくて、おかしくて……。けれど、そんな自分たちがなんだか愛おしかった。

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