極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
羽田空港内で働いているとはいえ、樹くんと私は同じ職場にいるわけじゃない。だから、社内に私たちが婚姻関係を結んでいると知る人はいないのだ。


私はもともと自らプライベートなことを掘り下げないけれど、どちらにしてもあえて触れる必要はないと思っている。
彼と私の関係は普通じゃないし、いつか離婚する可能性だって大いにある。


そのときに、私たちの関係が知れていれば、詮索する人が出てきたり噂の的になったりするかもしれない。
そういうことは、できる限り避けたかった。


だって、数年単位で異動がある私とは違って、樹くんは恐らくずっと羽田空港にいる人だから。
きっと、変な噂になれば、仕事がしにくくなるだろう。


籍を入れたときには、そこまで思い至らなかったけれど……。今さらとはいえ、気づいたからにはなんの対策も打たずにはいられない。
その場しのぎかもしれなくても、私のせいで彼に迷惑をかけたくなかったから。


樹くんには『あまり大っぴらにしたくない』と相談すると、微妙な顔をされてしまったけれど……。

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