極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
(すごいなぁ……。女性パイロットなんてかっこいい)


尊敬と感心が芽生えた心の片隅で、ほんの少しだけほの暗い感情が滲む。


樹くんはこれまでに数回コーヒーを買いに来てくれていて、ときには同僚と一緒だったこともあった。
ただ、その相手が女性だったのは今日が初めて。そのせいか、なんとなく落ち着かないような気持ちになってしまった。


そんな私を余所に、彼は唇の端を微かに持ち上げて踵を返す。
広い背中を見送って程なく、女性スタッフのひとりが耳打ちしてきた。


「あのふたり、羽田の名物カップルなんですよ」

「え?」

「女性の方は馬場園(ばばぞの)さんっていうんですけど、ふたりともパイロットで美男美女だし、外部向けの広報でふたり一緒に取り上げられたこともあるそうですよ。もともとそれなりに仲がいいみたいですし、恋人なんじゃないかとか、婚約間近なんじゃないかとか、密かに噂なんです」


胸の奥がチクリと痛む。こんな感覚を抱くこと自体がおかしいのに、頬が引き攣りそうになってしまった。

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