極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
その日の夕食後。


「そろそろ、改めて指輪を見に行かないか?」


樹くんが笑顔でそんなことを切り出した。


「え? でも……」


あれ以来、お互いに指輪のことには触れていなかった。
私はやっぱり必要がない気がしてきていたし、彼も似たようなことを考えているのだと思っていた。


「いつまでも指輪がないのも不自然だろ。芽衣があまり気乗りしないみたいだったから様子を見てたけど、親の前でも指輪をしないっていうのはな……」


樹くんの言うことはもっともだ。指輪をしていないと、両親は疑問に思うだろう。


「母さんに『指輪くらい買ってあげなさい』とか言われそうだし」

「おばさんなら、そんな感じで樹くんを怒りそうだね」

「だろ? だから、そろそろまた店に行ってみないか? この間の店に欲しいものがなかったなら、何軒でも回ればいいし」


彼の提案が嬉しくないわけじゃない。


私たちの関係性を思えば複雑な気持ちにはなるけれど、樹くんが私のことを考えてくれているのだとわかるから。
今日まで指輪のことを切り出さずにいてくれたことも、そういうことだろう。

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