極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない

* * *


今年の梅雨入りは例年よりも早く、しかも長引いていた。
五月末からかれこれ一か月半、先週には七月に入ったというのにまだ雨雲が広がっている日が多い。


ただ、最近は台風や荒天はほとんどないため、樹くんはシフト通りに帰宅できている。相変わらず彼と顔を合わせる時間はそう多くないけれど、それでも嬉しかった。


けれど、同時に困り事も増えた。
以前よりも、樹くんと体を重ねることが多くなったのだ。


まるで、本当の恋人か夫婦のように……。もしかしたら、それよりもたくさん彼に抱かれているんじゃないかと思う。


樹くんは、当たり前のように私をベッドに誘うようになった。


今までは主にお互いの休日や朝が早くない日の前日など、仕事のシフトを加味していたはずなのに……。いつからか、ふたりとも夜に家にいるときには一緒に眠るようになっていた。


もう肌に馴染んだ樹くんのベッドで抱かれるたび、彼の甘さがどんどん増すようになって。単純な私はそのことに喜んで、そしてときに傷ついてしまう。


私がどんなに樹くんを想っていても、彼の中には私への愛はないのだ……と。

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