極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
けれど、いざ他人から言われると心が痛かった。
自分でも思っていたことなのに、まるで現実を突きつけられたようで胸の奥が急激に苦しくなった。


(結局、私は樹くんのことより自分の気持ちを優先してただけなんだ……)


樹くんへの罪悪感が大きくなる。
やっぱり、最初からもっときちんと話し合い、彼に『責任はない』と伝え続ければよかった。


結婚を提案してきたのが樹くんだったとしても、毅然と突っ撥ねればよかった。
そうしなかったのは……それができなかったのは、本当は嬉しかったから。


たとえ酔った勢いでも、初恋の人に抱いてもらえたことが嬉しくてたまらなかったから……。


今までずっと、この本音に蓋をしていた。
ずるい考えを持って抱かれた自分自身を庇うように、彼には『気にしないで』なんて言って、全力でいい子のふりをしていただけ。


本当はとても嬉しかった。


あんな形でも、忘れられない初恋の人に抱いてもらえたことが……。
偽りの形に苦しんでも、心の奥底では憧れ続けていた人の妻になれたことが……。


あわよくば、樹くんも自分を好きになってくれればいいのに……なんてことまで脳裏を過ったことが何度もある。

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