極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない
「どっちから告白したの? まさか……樹くんから?」


じっと見つめられて、とうとう言葉に詰まった。


結婚の提案は彼からだったけれど、告白やプロポーズをされたわけじゃない。あれをプロポーズというには、あまりにも都合がよすぎるだろう。


さすがに、『樹くんから』と言うのは忍びなかった。


「私からです」


私の答えを聞いた途端、馬場園さんの表情が緩む。クスッと笑った彼女の瞳には、普段の余裕が戻っていた。


「じゃあ、情に流されちゃったかな。樹くんは優しいから、幼なじみの女の子に告白されたら断れないだろうし。幼なじみと付き合ったら、責任取って結婚も……とか考えそうよね」


鼻で笑われたことに、怒りはなかった。
情けないことに、馬場園さんの言葉に共感すらしてしまったから。


告白したわけじゃないけれど、酔った勢いで体の関係を持ってしまったことに対して、樹くんはきっと責任を感じている。


それは最初からずっと思っていたこと。そして、だからこそいずれ離婚する覚悟もあった。


彼が優しくて……優しいからこそ、そうしなければいけないと思っている。

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