初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい


「……彼女は、まだ?」

 目を泳がせながらも、私はそう尋ねる。

 新婚生活最初の朝に、妻の状況を把握しておらず、侍女達に尋ねる夫……。

 なんとも気まずいその質問に、彼女付きの侍女の一人がおずおずと答える。

「ステファニー様は、お部屋でお食事を取られるそうです」
「……具合でも悪いのか?」
「……………………。はい」

 煮え切らない侍女の様子に、私は胸がモヤモヤするのを感じる。

 なんなんだ彼女は。
 彼女の念願の結婚式を挙げたんだ。その翌日に機嫌を損ねることはないじゃないか。……正確には、初夜からだが。

 私は立ち上がって、彼女の部屋へと向かう。
 そんな私を見て、先程私に彼女の様子を教えたステファニー付きの侍女が、慌てて私を止めようとしてきた。

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