初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい


「お、お待ちください! ステファニー様は、本当にお加減が悪くて、お会いできないと……」
「ならなおさら会いに行かないと。私は夫なのだから」
「……あの、ステファニー様は…………」
「なんだ?」
「自分は本当の妻ではないから、若奥様と呼ばないようにとおっしゃっています……」
「なんだと!?」

 私の叫びに、侍女は驚いて身を固くしてしまう。

「あっ、いや、君は悪くない。急に大声を出してすまない……」
「は、はい」

「――若旦那様」

 刺すようなその鋭い声音に、私は背筋を凍らせる。
 声の主は執事である。

「な、なんだ」
「若旦那様は昨日、若奥様に何をおっしゃったのですか」
「何を、とは」
「その目の下のクマ。寝ていらっしゃらないようですが、若旦那様はいまだ若奥様と、ご夫婦になられておりませんね?」

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