笑顔可愛すぎるので、笑顔禁止です!三島さん

三島さんとの出会い

三島藍さんは一言で言うと陰キャだ。
話しかける人と目線を合わせなくて、僕が話しかけてもずっと下を向いている。
だけど成績優秀。学年5位。
その代わりと言ってはなんだけど、三島さんはスポーツが全くと言っていいほどダメダメだった。
体育のリレーで1人必死に走っているのを見たし。
ハードルでは全部のハードルを倒して男子に笑われていたし。
そんな彼女と初めて話し始めたのは、2週間前のこと。


その日は数学係の仕事で、クラス全員のノートを回収するというめんどくさい仕事があった。
その時はまだ三島さんのことが苦手だったから、いやいや話しかけたんだ。
『三島さん、数学のノート貰ってもいい?』
恐る恐る話しかけると、三島さんははっとした表情になって、こくりと頷いた。
そして、机の中を探り始める。
しばらく漁ったあと、さぁっと三島さんの顔が青ざめていく。
それで、なんとなく察する。
ノートを、忘れたんだと。
『もしかして、忘れた?』
そう問いかけると、こくりと頷く彼女。
『じゃあ、先生に言っとく___』
『っ、待って…!』
教室から出ようとしたとき、突然ぎゅっと制服の裾を引っ張られた。
っ、え?
驚いて見ると、カタカタと震えている三島さん。
なんだ、この反応…。
不思議に思い、『どうしたの?』と尋ねる。
『ダメ…ノート、出さなきゃ…っ』
『でも三島さん、無いんでしょ?なら…』
『ダメ…!!』
…?
どうして…と思い、同時にめんどくさくなってしまった。
早くノートを先生に提出して、部活に行こうと思っていたのに。
そこで、ピンと閃いた。
『三島さん、僕ここで待ってるから、家帰ってノート取ってきなよ。三島さん家近いでしょ?』
僕の言葉に、三島さんはばっと顔を上げた。
その表情は、キラキラと輝いている。
『い、いいの…?』
『うん』
『ありがとう…!行ってくるね…!』
そして、三島さんが教室を出て行った。
そこで、俺は気づいた。
三島さんは50メートル走11秒の鈍足ということに。
結局僕は部活終了時刻30分前に部活に顔を出すはめになり、顧問にこっぴどく叱られた。
あの野郎…!
帰り道。
道端の小石を蹴り飛ばしながら、普段は滅多に通らない道に入る。
その道で、猫を見つけた。
っ…!
「か…か…可愛い…!!」
その猫は真っ白で、しっぽだけ薄いクリーム色。
可愛すぎる…。
そっと近づいて、猫の頭に手を伸ばす。
わわっ…!
逃げない…!
首のあたりを撫でてやると、気持ち良さそうにゴロゴロと鳴いた。
あれ?
首輪…?
『っ、あ…!』
え?
振り向くと、なんと三島さん。
『み、三島さん!?どうして…』
『え、っと…ね、猫…』
その言葉に納得する。
この猫は、三島さんの猫だったのか。
毛並みが綺麗だし、首輪も着いていたから飼い猫だとは思っていたけど…。
『その子、クリームって言うの。知らない人には絶対に懐かないのに…凄い』
クリーム。
この子、クリームって言うのか。
名残惜しいけど門限ギリギリだから、仕方なくクリームと三島さんにバイバイする。
今度はクリームにマグロの缶詰でもあげるかな。
そう思いながらその日は家に帰った。
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