笑顔可愛すぎるので、笑顔禁止です!三島さん

雅先輩と美作

「あ、みやび先輩おはようございます」
「おはよう〜」
輝刈雅(ヒカリミヤビ)先輩。
先輩は小学校の頃から有名人で、走り高跳びのプロだ。
余裕で130センチを飛び越え、挙句の果てに最高記録で150弱センチ。
本当に恐ろしい先輩だ…色んな意味も込めて。
「よっしゃあ!いっくよー!」
雅先輩は声をかけて勢いよく走り出す。
ふわっ…と軽やかに跳んだ先輩。
「おっと」
棒がガコンッと音をたてて外れ落ちる。
その弾みで先輩がマットに手をついた。
その途端。
「大丈夫ですか!?雅先輩!」
慌てて走って来たのは、美作柚菜(ミマサカユズナ)。
美作は3組の走り高跳び選手。
同性の雅先輩を溺愛していて、雅先輩もそれを嫌がる様子は特に見せず、むしろ喜んでいる様子だった。
「あはは〜、大丈夫だよ、マットあるし」
「ほんとですか?」
雅先輩の腕にぎゅーっと抱きつく美作。
っ、おえ…。
込み上げてきた吐き気を抑え、フラフラとした足取りで水を飲みにバッグを置いた場所に戻る。
美作は、4月はあんなんじゃなかったんだけどな…。


美作は入学したては今からは想像できないほどの問題児だった。
制服は第二ボタンまで全開からのスカートを膝まで折り、メイクもバチバチ、髪は巻いているというオール校則違反。
プリントはやらないし、出さない。
友達も作らない一匹狼。
挙句の果てに先生に反抗。
毎日学年評議委員に注意され、よくやるなぁと呑気にそう思っていた。
ある日、僕の担任がそんな美作を心配し、陸部に彼女を誘った。
そして、美作は雅先輩に出会った。
一匹狼という噂は学校中に広まっていたため、誰も彼女に声をかけなかった中、雅先輩だけが話しかけた。
雅先輩は優しいから、美作をほっとけなかったんだろう。
最初は先輩を拒絶していた美作は、段々先輩を信頼していき、次第に仲良くなって行った。
陸上にのめり込んだ美作は、それ以来校則違反はしなくなった。
どうやら、雅先輩は真面目な可愛い子が好き、という情報をゲットしたらしい。
多分、男性のタイプだろーけど…。
「ど?順調?」
「あ、ゆーき先輩!おはようございます」
ゆーき先輩こと、高橋勇輝(タカハシユウキ)先輩。
ゆーき先輩は長距離走の選手。
駅伝メンバーにも選ばれていて、仁科中の期待のエースだ。
‪今は10分間走が終わったところらしい。
相変わらず体力おばけだな、はは…。
ごくごくと水を飲み、気合いを入れ直す。
「お?跳ぶ?」
「はい」
雅先輩の言葉にこくりと頷いて、ふぅっと息を吐く。
神経を集中させて…、今だ。
タッと風を切るイメージで助走の数メートルを駆け抜ける。
勢いよく踏み切り__145センチを飛び越えた。
「ナイスー!」
雅先輩とハイタッチ。
朝だからあまり調子はでないけど…朝でも145を跳べたのは嬉しい。
その後も何回か跳び、全体でストレッチをして朝練は終了した。
< 3 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop