筒井くんと眠る夜 〜年下ワンコ系男子は御曹司への嫉妬を隠さない〜
「でもやっぱり誰かに決められた結婚は嫌だな」
私は筒井くんの腕の中でつぶやいた。
「俺、小夜ちゃん好きだよ」
筒井くんが耳元で囁く。会うたびに好きって言われてるから慣れてるけど、何回言われても悪い気はしない。
「私も筒井くん好きよ」
「じゃあ俺と結婚する?」
「就職するなら考えようかな」
筒井くんへの好きは意味の無い好き。
かわいいから、優しいから、気持ち良くしてくれるから好きなの。
私のこれから先の人生に交わるような好きじゃないの。

あなたじゃ私をほんの少しも外に連れ出すことはできないでしょ?
だから私たちは割り切った、お金で繋がった関係でいるのがいいの。

「ちゃんと恋愛してみたいな……」
そうつぶやいた私を筒井くんは背中からギュッと抱き寄せた。なんだか不機嫌な抱き方のような気がした。
「小夜ちゃんが恋愛したら、俺はどうなるの?」
「そうね……どうなるんだろう。もうこういう風には一緒にいられないだろうね」
「困るよ」
「お小遣い、なくなっちゃうもんね」
冗談混じりにクスッと笑いながら言ったら、筒井くんは強引に私を振り向かせて唇を奪った。
「小夜ちゃんには俺が必要だって身体でわからせる」
そう言った筒井くんの目はいつもよりギラッとして少しだけ怖いと思った。それからいつもよりも乱暴に私の身体を貪った。筒井くんは優しいけど、ベッドではいつも少しだけ乱暴で、私を大事には抱かない。それでいいし、それがいい。

筒井くんといる時だけが、東条じゃないただの〝小夜子〟だから。
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