この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編

そして出産

日本に帰国後は、本当にスケジュールに終われる毎日で、蓮の帰宅が日付を跨ぐ日も増えた。
それでも、2週に1回になった定期検診には必ずついて来てくれる蓮の優しさに涙が出るほど嬉しかった。

こんな大物芸能人の結婚、それに隠し子発覚の大スクープだが、今のところ上手く隠せている。

それもその筈、セレブ御用達の産婦人科は完全予約制で、特に心菜達はかなりの厳重警戒、VIP待遇だ。

どうか、せめて無事に産まれるまでは、このまま平穏で過ごしたい。最近の蓮はそれについて、かなり目を光らせ慎重な行動をしていた。

「角の黒いパーカーの男、週刊誌の記者じゃないか?」

蓮は生放送のライブの後、駐車場からの出入り待ちのファンの中に、異様な風貌の男か1人バイクのヘルメットを片手に立っている。
それを目敏く見つけて助手席に座る森元に伝える。

「そうですね…片手の一眼レフと言いプロっぽいです。フリーの記者かも知れません。」

森元は素早く運転手に伝え、家への迂回ルートを辿る。

日本に帰国時、漏れてしまった帰国の情報は、どこからなのか未だ特定出来ていない。

SMSで拡散した事は間違い無いが、プロに頼んでも決して大本に辿り着く事が出来なかった。分かったのは1人だけでは無いと言う事。

同日時に10人のアカウントから一斉にアップしていたのだ。これはさすがに誰が主か分からない。引き続きその10人のアカウントについては、プロに見張って貰っている。

「例の情報漏れ、もしかした隠根の疑いは無いですか?誰かに恨みを買うような事心辺りありませんか?」

「そんな事…沢山あり過ぎて分からないな。」
蓮だってこの芸能界を1人で這い上がって、今の地位を経た男だ。恨みの一つや二つ容易くあるだろう。

芸能界には嫉み恨みは常だから、特に気にも留めてこなかったし、そんな負の感情に負けない強さを持っていた。

ただ、ここに来て心菜と言う伴侶を経て、自分以上に大切な守りたい者が出来たから、それを弱味に捉えられ、足を引っ張る輩がいる事は確かだ。

守り抜く。確かな事は一つだけ。

例え芸能界を去るような事が起きても、心菜とお腹の子を守り抜く。その思いだけは揺らぐ事は無い。
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