それでも生きていてほしいから~統合失調症になった私の綴るアナタと十四人への手紙~

第一章 私のお母さんへ

辛く当たる貴女のことが嫌いです。

お母さんは昔から、虫の居所が悪いといつもと人が変わってしまったかのように私に辛く当たりますね。

鏡の前に立つ貴女の少し後ろに立って、一緒に鏡の中に写った私を見て、貴女が何と言ったか覚えていますか?

そんなに昔のことじゃないですよ。

今この手紙を書いているときから半年も経っていません。

……きっと覚えてないですよね。

貴女はいつも調子の悪いときに言った言葉なんて覚えてはいません。

答えは

「色白いね、豚みたい」

です。

冷たい声色でそう吐き捨てられました。

私は肌の白い父に似たようで、母よりも少し色が白いです。

時折誰かに「色白いね、羨ましい」と言われることが嬉しくて、いつも日焼け対策は念入りにしています。

でも、色が白いから豚みたいなんて誰にも言われたことはありません。

私はどちらかというと普通よりもふくよかな体型なので、「豚みたい」なんて言葉が出てきたんですよね?

私のつむじを見て、「ハゲそう」と言い放ったのも同じ時期でしたね。

もう少し時を遡(さかのぼ)ると、ニ年程前。

貴女が精神科に入院する少し前です。

魚料理をしている貴女の横で、私はお手伝いをしていました。

貴女は魚をフライパンで火にかけ、違う作業をしていましたね。

私に魚を見ているようにと頼みました。

それで私がフライパンの上の魚をフライ返しで触ろうとすると、

「崩れるから触らないで!」

語気を強めて叱りました。

しばらくして、私が魚の裏側をフライ返しで少し覗くと焦げていたので

「焦げてるよ」

と、言うと

「全く役に立たないね!」

そう言われました。

具合の悪い時の貴女はいつもこんな感じで理不尽です。

でも、貴女に言われた言葉で一番傷付いたのは小学ニ年生の時です。

今でもその時の悲しさと絶望をハッキリと覚えています。
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