淫夢でも溺愛されたい! 〜サキュバスは隣人にガチ恋する~
待ち伏せされる
戸倉瑞樹を見るとまだ胸がドキドキする。
完璧に振られたはずなのに、諦めることができていない自分がいる。

ドキドキすると同時に叶わない恋とわかっているから胸が痛くなって、涙が出てくる。
恋という感情はとてもやっかいで矛盾だらけのものだった。

とにかく戸倉瑞樹と顔を合わせないように気をつけて生活を続けていた。
1度顔を見てしまうと麻里奈の心は不安定に揺れ動き、勉強どころではなくなってしまうからだ。

だけどそんな生活も長くは続かなかった。
「こんばんは」

マンションへ戻ってきた麻里奈は驚いてその場に立ち尽くしていた。
麻里奈と鈴子の暮らす部屋の前に戸倉瑞樹が立っているのだ。

一瞬見間違いかと思って瞬きを繰り返してみたけれど、戸倉瑞樹で間違いなかった。
「え、あの……部屋を間違えてないですか?」

そう質問すると戸倉瑞樹は声をあげて笑った。
「今日はあなたを待っていたんです」
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