最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 実験では大抵、肉体活性化の解放は五十パーセントで抑えられていた。八十パーセントの解放した際、その反動で、内臓だけでなく骨までずたずたになって三日間は人体蘇生液に浸され、被検体の寿命も明らかに減少したせいだ。

 そんな過去を思い出しながら、サードは肉体の活性化が上がるごとに身体が軽くなるのを感じた。幼少期は身体が発達しておらず、痛覚もあったから酷い苦しみだったが、まるでガタが来る前まで蘇ってくれたような解放感すら覚えた。

「肉体活性化、解放八十パーセント」

 ギシリ、と肉体組織が人体の限界を超える音が耳に響いた。

 活性化された悪魔細胞が、身体を急速に半悪魔として相応しい、強靭な生き物に造り変えていくのが分かった。

 自然と爪が黒く染まり始め、強度を増して鋭利な形になる。普段見回るような歩調で足を進めながら、校舎に入ってすぐの壁にそっと爪を立てると、柔らかい泥を抉るように壁が裂けてしまう。

 サードたちは、常に自分の身体一つを武器としていた。肉体活性化によって筋力とスピードが常人を遥かに上回ることで、拳一つで鎧を打ち砕き、手刀で肉骨を断ち、簡単に心臓を抉り出すことも可能にしていた。
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