最強風紀委員長は、死亡フラグを回避しない
 もし、これまで例のない、大規模な『風紀委員長リコール』というものを起こすのであれば、絶好のチャンスともいえるだろう。

 けれど自分は、『サード・サリファン』という役割を与えられた、道具の一つにすぎない。悪魔の襲来予定がなかったとしたのなら、本来であれば風紀委員長の席には、別の人間が座っていたはずなのである。

 そもそも、その事情がなければ存在していない生徒。

 サードはそう考えながら、まぁいいかと気楽になる。リューを含む部員たちの神妙な空気を払うべく、わざと意地の悪い笑みを作って見せた。

「ふうん、リコールね。いいんじゃねぇの? リューが委員長で、他の誰かが副委員長を継ぐ。それで俺が平の部員になって遠慮なく違反者をぶっ飛ばす」
「えぇぇえええええ!? 僕が委員長やるなんて絶対無理ですよッ」
「委員長が平部員とか、有り得ねぇっす!」
「片っぱしから喧嘩しそうなんで、どうか学園の平和のためにも委員長でいてくださいッ」
「あいつらは委員長の良さを分かってないんですよ!」
「委員長がリコールとか、前代未聞じゃないですかッ。冗談でもやめてくださいよ」

 リューを含む部員たちが、次々に猛反論してきた。

 慕われるほどのことをした覚えもない。それなのに彼らは「委員長をリコールさせるもんか」という勢いのまま書類作業に戻ってしまて、サードはよく分からなくなって放っておくことにした。

「あれ? 委員長、襟のところどうしたんですか? 小さな染みが出来てますけど」

 こちらの様子を盗み見たリューが、きょとんとした顔で指を向けてそう言った。

 サードは、ネクタイの上の襟を指で辿った。吐血の際にはねてしまったのかもしれない。いつもならしない不注意だな、と反省しつつ

「――どっかで汚れたんだろ」

 と、なんでもないように手を振って答えた。
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