祝福のキスで若返ったかつての英雄に、溺愛されることになった聖女は私です!~イケオジ騎士団長と楽勝救世の旅と思いきや、大変なことになっちゃった~
 ついさっきまで窓の方を向いていた彼は私に向き直り、顎に手を当てて足を組んで息をついた。

「……元の世界に、帰りたくない事情でも?」

「私は積極的に、元の世界に帰りたいとは思いません。この世界のように、危険な魔物は居ないけど……なんだか情報に溢れているせいか、刺激的なことや辛いことが多過ぎて……心がついて行かないことがあるんです。この世界に来て、気持ちが穏やかでどれだけの無駄に囲まれていたか目が覚めました。私はこういう生活をしたかったのかもって」

 手放せなかったスマホは電池が切れて、すぐに使えなくなった。あれほどまでに更新が気になっていた複数のSNSから解放されて、今は驚くくらい気持ちが楽になった。

 こういう中世ヨーロッパのような世界の方が向いているのかなって思うし……あと、魔法が存在するから多分向こうの世界より便利なことも多い。

 なにより、やっぱり間近で見ているジュリアスが素敵。

「聖女様は……この世界に、永住しても良いと?」

「良いです。私と結婚してくれます?」

「そうですね。先ほど聞いた聖女様のご事情を踏まえて、前向きに考えておきます」

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