祝福のキスで若返ったかつての英雄に、溺愛されることになった聖女は私です!~イケオジ騎士団長と楽勝救世の旅と思いきや、大変なことになっちゃった~

12 風化

「……思い込みで、何かを言わない方がよろしいのでは? もうすぐご自分に訪れる近い未来については殿下ご自身が、一番知っているのではないですか」

 ジュリアスはエセルバードを見る目を細めて、冷たくそう言い放った。

 彼とは対照的に熱くなっている様子のエセルバードはジュリアスが若返った団長だということを、以前から疑っていたのかも知れない。

 そうよ……よくよく考えて見ればそれを変に思わない方が、おかしかったのかも。

 いきなり居なくなった団長に、代理としてやって来た息子……それに、私の祝福の力。団長が居なくなっても騎士団の結束が変わりないのは、副団長で現在団長代理のハミルトンさんが細かく説明したからだ。

 昔から右腕だったハミルトンさんが、互いに信頼している団長のことで嘘をつくはずがないと……それに、息子として現れた若いジュリアスの強さは、群を抜いていた。

 団長の息子なら強いだろう=では、これからの旅も問題ない=別にその他に考える必要ない。そんな結論になってしまっても、それは仕方ないと言える。

「黙れ! ……お前が、ジュリアス本人なんだろう。俺は騙されないぞ。何故、聖女の祝福の能力が知れたのなら俺に言わないんだ? 取られるのが怖いのか?」

「お見苦しい。これほどにまで否定されていても、話を聞き入れないのですか」

 何を言っても引きそうにないエセルバードを前に、ジュリアスは諦めの気持ちを込めてか大きく息をついた。隣に居る私も何かしなきゃと思ってはいるんだけど、口を挟む隙間も何処にも見当たらないの!

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