イケメン過ぎる後輩くんは、可愛い先輩を甘やかしたい。

 
 

「俺、モテるんです」

「えっ、?は、はい……」


 その日の文化祭は大盛況だった。

 その喧騒から遠く離れたこの茶室はやけに静かで、着物姿の私がお茶を点てるチャッチャッという音だけが大きく響いている。

 そこに赤座布団の上で堂々とあぐらをかき、うなだれている男の子が、一人。

 みんなこの立派な茶室に入るとちょっと緊張した様子で姿勢を正すのに、1人でふらっとやってきてドカッと座った彼は相当な強者。

 そして今、なぜか突然『モテるんです』と告白してきた男の子に、エセ茶道部の私は〝自分で言うんだ〟という感想を心の中にしまって、失くした眼鏡の行方に思いを馳せる。

 その男の子の表情が見えなかったのは、行方不明の眼鏡のせいだった。

 それでも彼がひどく落胆していることはその声や空気から伝わってきていたので、エセ茶道部なりにせめて美味しいお茶を出してあげようと、眉間にグッと力を入れてチャカチャカする。
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