初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
 パタンと扉が閉まってから、ケイトは身体を起こした。夜会に参加したままのドレス姿である。彼らが慌てて対応してくれたのがわかる。

 今日は、わざと灰鼠色の地味なドレスにした。できるだけ目立たないように。ケイト・ダリルであると知られないように。
 ラッシュがうまく紹介してくれたから、彼の遠縁の女性ということになっていたはず。
 だから、イアンは気づいていないだろう。あの夜会にケイトが参加していたことを。

「奥様、着替えますか?」
「えぇ、頼めるかしら」
「もちろんです」

 ケイトよりも胸を痛めているのはナナかもしれない。
 彼女を励ますように、ケイトは笑みを作った。

 寝台から降りて着替えをする。

 だが、これからの身の振り方をどうしたらよいのかがわからない。イアンとは二年間は白い結婚を続ける必要がある。それまで離縁ができないのだから、仕方あるまい。

 では、二年後は?

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