別れの曲
 夜。

 医師から、状態が横ばいに落ち着いたとの報せを受けて、私たちはそれぞれ帰路についた。
 家に辿り着いてから少しした頃、コンペの主催側から、事の説明を求める電話がかかってきた。
 私は手短に話し、謝罪とともにコンペ辞退を表明したけれど、先方からは、せっかくだから最後の一曲も聴きたいものだったと言われた。
 選考の対象にはならないが、良かったら聴かせてくれないか、との話も持ち掛けられたけれど、もう何の意欲も沸かず、すっかり疲弊しきっていた私は、は何も言葉を返すことが出来ず、少しの間を置いてから通話を切ってしまった。

 もう、そのことは考えないように決めて。
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