愛でられて、絆される
それは、四時間前に遡る━━━━━━

絆奈は、中学の同窓会でホテルに来ていた。
絆奈は今日の同窓会を、楽しみにしていた。

それは……絆奈の憧れで、初恋の人・由利原 那王と10年ぶりに逢えるからだ。



中学の入学式で憧れを抱き、中学三年生の時に一緒のクラスになった、那王と絆奈。

イケメンで、優しく穏やかな、まさに王子のような那王。

非の打ち所がない、完璧な男子。

絆奈の心はあっという間に奪われ、片想いの幸せな日々を過ごしていた。

一年間、席が近かったのもあり、那王と絆奈は話をすることが多かった。

賢く頭の良い那王に、勉強を教えてもらうこともあった絆奈。
放課後、一緒に試験勉強をしたこともある。

絆奈の恋心は、日々膨れ上がっていた。

そして那王も、控え目だが明るくてピュアな絆奈を可愛いと思っていて、好意を抱いていたのだ。

そんな二人。
仲の良いクラスメートの関係から発展することはなかったが、卒業するその日まで、仲の良い関係を続けていた。


そして10年後の今日。

同窓会で再会した、那王と絆奈。
『わぁー、相変わらずカッコいい…/////』

会場に入ってすぐに、那王を見つけた絆奈。

那王は、中学の頃と比べ物にならないくらいに美しい男性に成長していた。

少し遠くから、那王を見つめていた。

『由利原くん、やっぱカッコいいよね~』
『今、HONAMI Jewelry のオーナーらしいよ!』
『え!?あの、有名な!?』
『全国No.1のジュエリー店だよね?』
『そうそう!有名人や、著名人は必ず持ってる!』
『結婚・婚約指輪も、人気だもんね!』
『じゃあ、チョーお金持ちじゃん!』
『イケメンで金持ち、更に性格も良いって……(笑)』

『……//////』
(そうなんだ…!素敵!)

同級生達の話が耳に入ってきて、絆奈は更に見惚れていた。

ワインを片手に、ひたすら見つめていた絆奈。

しばらくして、那王がキョロキョロと周りを見渡し始めた。
『………』
(ん?誰か、探してるのかな?)

探してる人がいるなら、声をかけて一緒に探す手伝いをしようかな?

そうすれば、那王と少しの間だけでも話をすることができる。

自分とは、もう…住む世界の違う那王。
遠い存在になってしまった那王に、今日だけは“普通に”会話がしたい。

どんな形でも、繋がりたい。

そんな思いで、絆奈は那王に近づいた。

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