愛でられて、絆される
結局那王に送ってもらい実家に帰った、絆奈。

「絆奈」
「ん?」

いつものように手を包み込んで、別れを惜しむ那王。

「絆奈は…さ…」
「うん」

「僕と離れたくないとか思わないの?」

「思うよ」

「じゃあ……一緒に……」

「え?」

「………ううん」

「那王くん?」

「何もないよ。
じゃあ…またね。
明日からちょっと忙しいから、また時間があいたら連絡するね」

「うん。
その間、声聞くだけとか出来る?」

「うん、大丈夫だよ」

「良かった!
那王くん、今日もわざわざ送ってくれてありがとう!
気をつけてね!」

「うん」
那王の顔が近づく。
絆奈も、ゆっくり目を閉じた。

口唇を重ねようとして、ピタッと止まる那王。

「………」
(なんで…僕だけが、こんな好きなんだろう……
絆奈も、もっと好きになって余裕なくしてほしい。
離れたくないって僕にすがってよ……!!)

那王は、絆奈の口唇に食らいつくように重ねた。

「んんっ!!?」
まさか、こんな激しくキスをされると思わない絆奈。
思わず目を見開き、那王の服を握りしめた。

しばらく貪って口唇を離し、額をくっつけた那王。
「はぁはぁ…絆奈、もっと…もっと僕を好きになって?」

「はぁはぁ…え…那王、く……?」

「僕から、離れないでよ………」
そう言った那王は、そのまま項垂れるように去っていった。

絆奈は、しばらく放心状態で突っ立っていた。



那王を傷つけてしまった━━━━━━━

しかし、わからない。

「那王くんの気持ちが、わかんないよ……」

那王のこともっともっと好きになってるし、離れるつもりさらさらない。

それをちゃんと伝えているのに………



「━━━━━だから!伝わってないのよ、それ」
岸峰の言葉だ。

後日絆奈は、岸峰とのランチ中に相談していた。

「でも、ちゃんと言葉で伝えてますよ?」

「それは、一橋さんの主観でしょ?」

「え?」

「彼がそんなことを言うってことは“伝わってない”ってことだよ?」

「そっか…
そうですよね……」


その日の仕事終わり。
絆奈は、HONAMI Jewelryに向かった。

『“会いに行ったら迷惑かも?
会いたいってワガママ言ったら、嫌われるかも?”
これって、全部一橋さんの主観。
彼がどう思うかは、彼にしかわからない。
一度やってみて“やめてくれ”って言われたら、その時に考えればいい。
だから、何でもやってみなよ!』

岸峰の言葉を受け、絆奈はおもいきって会いに来たのだ。


“あるお願い”をするために━━━━━━
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