ムラマサ! ~道端でちょっとめんどくさいイケメンを拾いました~
「読んでなかったんで」

「読んでやれ」
と脇田と同じことを村正は言う。

「名前しか名乗らなかったのは、ムラマサのこともあったし。

 俺の心の名前は違うからだ」

 ……心の名前は違う。

 心の中では、ルーカスとか、ビクトリアとか。

 自分のことを呼んでいるのだろうか。

 中二病かな、と思ったとき、煮え立つ味噌汁を見ながら、村正は言った。

「今の父親、義理の父親なんで。
 俺は今でも、『小久保村正』なつもりはない」

 ……そういえば、取引先の会社の社長の義理の息子だとか、なんとか脇田さん、言ってたな。

 思ったより深刻な話題だったようだ。

 中二病なんですか、とか言わなくてよかったと思いながら、熱くなり過ぎて、激しく動いているナスをそのまま眺めていると、村正が火を止めた。
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