希望の光~たとえあなたが消えても愛し続ける~
幻影と愛
それからまた数日が経ち、夜も更けた頃、京夏さんの部屋から小さな声が漏れ聞こえた。そこは、元々、俺の寝室だった部屋だ。


吸い寄せられるようにドアに耳を近づける。


「……ごめん……なさい。私が……悪いの、ごめんなさい……」


確かにそう聞こえた。
京夏さんの声が痛々しくて、息が苦しくなる程に胸が締め付けられた。


「……オムライスが美味しく作れなくて……ごめんなさい。料理が下手で……美味しくなくてごめんなさい。あっ、嫌っ、叩かないで下さい。お願い、止めて……」


幻影……?
京夏さんは、毎日毎日こうして謝り続けてきたんだ。何にも悪くないのに、謝っても謝っても許してもらえなくて……
ただ泣いて、怯えて、耐えて……


俺は、そんな京夏さんを一刻も早く地獄から救い出したかった。離れていても、なおつきまとう悪夢から、笑顔で溢れる世界に連れ戻してやりたかった。
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