『遠慮しないで』と甘く囁かれて ~誠実な御曹司の懐妊溺愛~
第六章
「佳奈、君のおばあ様に挨拶させて欲しい。今後のことも、きちんと話し合いたい」
「それは、ちょっと待って」
 玄関まで来て言い争うのも良くないと思い、佳奈は礼二を外に立たせたまま家の中に入っていく。せめて祖母に伝えてからでなければ、驚かせてしまう。
「おばあちゃん、戻ったよ」
 上がり框に靴を置いて、佳奈は奥にある台所へ向かった。祖母はそこで作業をしていることが多い。
「おばあちゃん? いないの?」
 声をかけるけれど返事がしない。ふと、最近眩暈がすると言っていた祖母の言葉が頭をよぎる。佳奈は不安に襲われながらも家の中にいるはずの祖母を探した。
「ああっ、おばあちゃん!」
 祖母は居間として使っている部屋にうつぶせていた。明らかに様子がおかしい。佳奈はむずがる真奈を畳の上に置くと祖母のところへ駆け寄った。
「おばあちゃん、おばあちゃん!」
 意識のない状態で寝ている祖母を見て、佳奈は悲痛に叫んだ。すると、その声を聞いた礼二が「佳奈、大丈夫か?」と問いかけてくる。
「礼二さんっ、来てっ、おばあちゃんが!」
 どうしていいのかわからず佳奈は礼二を呼んでいた。傍にいる真奈も異常を察知したのか、ぐずり始める。
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