秘密
「…それは確かに。理世の考え方もわかる。妹の秘密は救えなかった。でも、主人公は救われたと思うよ」

 その言葉に顔を上げた。彼は真剣な眼差しにどこか悲しみを滲ませながら、

「大きな秘密って自分の身を滅ぼすから。抱えきれなくなった秘密は破綻する。自分の心が壊れて、その反動でつい死んでしまいたいとすら思う」

 と、静かにまるで自分に言い聞かせるように言った。
 私はつい、口を滑らせてしまう。
 
「そう思ったことがあるの?」

 ―――しまった。

 彼はわかりやすく笑顔になって、「ないよ」とさっきまでの雰囲気が嘘かのようにけろりと言ってのけた。分厚い壁が一気に目の前に立ち塞がっている感覚に、思わず息を呑んだ。

「ごめん、無神経だったね」
「いや、ないから大丈夫だよ。気にすんなー?」

 そういってははは、と笑う。彼は今日一日凄く優しく、楽しくもてなしてくれた。きっとどんな人にもしっかり気が回せる。この人は笑顔は楽しい時でなくて、相手を安心させる処世術だとわかった。笑顔は拒絶で、立ち入ることができない領域がある。秘密が一切見えない初めての相手。もしかしたらそれが原因?
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