秘密
一瞬呆けた後、目の前の彼女はみるみる顔を赤く、眉毛を吊り上げながら去っていった。高そうなヒールが折れそうなくらい力強く音を立てて、やがて遠のく。私はその後ろ姿が完全にいなくなるのを確認してから、溜息を吐いた。どっと疲れが肩に降りてきてのしかかった。彼女のしてもらって当たり前の精神が私の気力を確実に吸い取った。それと同時に彼女と関わってしまったことで自分の嫌っていた能力を使って追い払ったことがとても許しがたかった。私は結局都合がよく、自分に対して甘ちゃんだと自己嫌悪することになった。
「―――っていう事がありましてね」
「本人に言うのかあ」
「全部、崖下のせいだから」
すみませんねえ、と謝る気がなくビールを一気に流し込む崖下に眉を潜める。大学から二駅ほどのお互いの家から遠く離れていないところの海鮮居酒屋で呑んでいた。あの日から二週間ほど経っていた。男を巡って修羅場していたと噂になり、意気揚々と聞こうとしたこの男にお前だよと突きつけた。やぶへびであるがゆえ彼はえぇと弱弱しく笑った。そしてあの日を説明したのだ。勿論、脅したところはオブラートに包む、というより短く軽く脅したということだけ伝えた。マグロとアボカドのワサビ和え、げそ焼き、枝豆、サーモンのカルパッチョなどを頼んで全部奢ってもらうつもりだ。
「―――っていう事がありましてね」
「本人に言うのかあ」
「全部、崖下のせいだから」
すみませんねえ、と謝る気がなくビールを一気に流し込む崖下に眉を潜める。大学から二駅ほどのお互いの家から遠く離れていないところの海鮮居酒屋で呑んでいた。あの日から二週間ほど経っていた。男を巡って修羅場していたと噂になり、意気揚々と聞こうとしたこの男にお前だよと突きつけた。やぶへびであるがゆえ彼はえぇと弱弱しく笑った。そしてあの日を説明したのだ。勿論、脅したところはオブラートに包む、というより短く軽く脅したということだけ伝えた。マグロとアボカドのワサビ和え、げそ焼き、枝豆、サーモンのカルパッチョなどを頼んで全部奢ってもらうつもりだ。