秘密
「知ってたくせに…」
「それは」
「最初から意識してたって言ったよね。嫌だったら、手だって繋いでない」

 彼はたじろいで、何かを言おうとして、また口を閉じた。
 告白だって慣れているはずだ。だけれど、私のことで動揺して感情を揺らしている。
 多少なりとも、何かを感じてもらえるなら嬉しかった。気持ちが溢れていくのが止められなくて、でもそれを全てぶつけるのは気が引けて絞り出すくらい食いしばった声で伝えた。

「崖下が、好き、なの」

 言葉にしたら、すんなりと肯定できた。崖下葵が好き。偽りなく、好きなのだ。
 彼はとても固い表情をして私の言葉を聞き、そのあと力が抜けたように表情を和らげた。眩しそうに目を細め、そのあとそうだよな…と呟いた。そこに先ほどの昏い光はない。
 
「いつも直球だよね、本当に…」

 酔いが冷めたみたいに顔の熱は引いていて、いつも通りの顔で呆れられた。

「崖下は逃げるよね」
「それはまあそうなんだけど……、素直に言っていい?」
「どうぞ」
「正直、困ってる」
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