秘密


 まるで告白したみたいだ、と今思い返しても思う。クローゼットから色々服を取り出してはうーんと悩みながら、崖橋葵のことが頭からちらつく。明日一緒に映画を見に行くことになった。折角だからこれも何かの縁だし、デートでもしてみる?なんて言われた。


 ―――初めてちゃんと話したけれど、爽やかでスマートな人だった。


 崖橋葵は好印象の固まりみたいな人物だった。少しちゃらけたところはあるものの、基本的に他人を不快にしない思慮深い人間だった。質問攻めしているときも、こちらに気を使わせないようなフランクさでこちらも笑ってしまった。いつもは秘密、が頭にどうしても過ってしまって深い関係を望めなかった。例えば窃盗をしたことがある、とか、それこそお母さんと同じように不倫したことがあるとか、人は必ずしも正しい訳ではないけれど可視化されているから倫理を反していると一歩引いてしまうのだ。


 けれど、彼は秘密が見えないからそれがわからない。
 もしかしたら無いのかもしれない。いや、秘密がない人間なんているのか?
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