厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 もう勘弁してほしいと懇願する声を無情に聞き流すライズ。離れようとするフランの体を引き戻し、耳元に顔を寄せてくる。
 耳元にかかる吐息。薄い夜着を通して伝わってくる体温と体格差。逞しい胸板から押し寄せる圧に、これはなんの拷問だろうと涙目になった。

「フラン、おまえの能力は貴重だ。だから自在に使いこなせるようになってほしい。だが現状、それが難しいことはわかっている。よって特訓する必要がある。わかるな?」

 至って真面目な顔で言われても、こんな姿勢で語ることではない。

「昨夜のことを思い出せ。同じ状況を繰り返せば、インプットされるのではないか?」
「いえ、なにも同じ状況でなくとも……」

 反論しようとして振り返り彼の表情を見たとき、フランは悟った。ライズはこの状況を楽しんでいると。
 紫の瞳が星空のようにきらきらと輝いて――陛下、いったいなにを期待されているのですか。

(困ったわ……こんなことになるなんて……)

 やがてそんな攻防にも飽きたのか、声のトーンを下げてライズは言った。

「さて、どうしたものか……。そうだな、これならどうだ?」
「はい?」
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