厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています

ざわめく帝国と乙女心(4)

       *

「さぁ、今日もきれいにしてやろう」

 高貴な立場には似合わないブラシを片手に、機嫌のよさを声に乗せるライズ。
 今夜も意気揚々と皇妃の部屋にやってきた彼は、カウチにゆったりと背をもたれ、膝に獣化したフランを乗せてブラッシングを施していた。
 それはとても恐れ多くて、最初はフランも抵抗して派手に逃げ回っていたのだが、立場上、最後には従わざるを得ない。今ではもう諦めて、されるがままになっている。

 特訓の成果は出ており、フランは意識して変身ができるようになっていた。これまでは練習する機会がなかっただけで、コツを掴めば難しいことではなかったのだ。無理に能力を抑えず適度に発散することで、もう暴発することはなくなるかもしれない。
 こうまでしてくれたライズには、感謝というには足りないほどの思いがある。
 それに、多忙な彼が執務を早めに切り上げ、こうして会いにきてくれることも、フランにとって望外の喜びとなっていた。
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