厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 ブラシの毛先が優しく背中を撫でていく。足の先までマッサージのように毛並みを梳かれて、その気持ちよさに身も心もとろけそうになってしまう。
 尻尾も耳もふわふわになって多幸感と眠気に負けてしまう前に、フランは気になっていた疑問を尋ねなければと気を引き締めた。

「陛下……。昼間のことですが、臣下の方を三人も退けてしまって、支障はなかったのでしょうか」

 カーネリア公爵家、ブルーネル侯爵家、コーラル伯爵家は爵位はく奪の上、財産を没収という処分を下された。
 皇帝に毒を盛ったのであれば死罪になるはずだが、実は彼らも、侍女の振りをしていた刺客によって騙され、利用されていたようなのだ。

 刺客は、皇帝に近づく機会を得るため離宮の侍女に扮し、令嬢を通して公爵たちにも取り入っていたらしい。
 公爵らは、接触してきた侍女から犯行の詳細は聞かされておらず、ただフランを追い落とすのにいい機会だからと、薬瓶を仕込むように言われたのだと。
 少し式典を混乱させるだけで彼らが関与した証拠は残らないと唆されて、その話に飛びついたというわけだ。
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