厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 その晩、シルビア姫の歓迎会を兼ねた晩餐会は、城のホールで盛大に開かれた。
 準備に時間がかかってしまったフランは、開始時刻から大幅な遅れをもって会場入りした。

 おそるおそる広間に足を踏み入れれば、きらきらと眩しい世界が眼前に広がり、煌びやかな世界への憧れが胸を満たす。巨大なシャンデリアの下、用意された贅沢なお料理に、優雅な音楽。招待を受け集まった貴族の男女が杯を交わし歓談をしたり、ダンスを楽しんだりと賑わっている。

(わぁ、ステキな雰囲気……。とても楽しそうだわ)

 黄金郷のごとき宴は、すでにたけなわとなっているようだ。
 この場に侍女を伴うことはできないので、知り合いの少ないフランはすぐに手持ち無沙汰になってしまった。来場者と交流し親睦を深めたい気持ちはあるのだが、自分から声をかけるきっかけがなかなか掴めず、会場の隅に不安げにたたずむのが精一杯だ。
 けれども今宵フランが身につけている光沢のある白と金色を基調としたドレスは、他の令嬢たちと比べても遜色のない、趣向を凝らした一着。幾重にもフリルを重ねたスカートには薔薇の花のモチーフがふんだんにあしらわれ、首元や耳には大粒のルビーが輝いて、フランの暖色の髪色を引き立ててくれている。
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