厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 人々は甘い蜜に群がる蝶のごとく、こぞってシルビア姫の周りに集まっていく。フランはただ圧倒され、立ち尽くすばかりだった。
 こちらもできる限りおしゃれをしてきたつもりだが、外見の問題ではないと思い知らされる。溢れる気品、華やかなオーラ、どれをとっても彼女の足元にも及ばない。
 自分が恥ずかしく感じられ、居ても立ってもいられなくなった。すぐにでもこの場を立ち去りたいと出口の大扉に足を向けたが、ふと思いとどまる。

(そうだ、ライズ様は……今どちらにいらっしゃるのかしら……)

 せめて彼の姿をひと目見ておきたい。普段の彼もステキだけれど、かしこまった場で正装した彼はどんなに輝いているだろうと、楽しみにしていたのだ。
 主役の姿を求めて人だかりのあるところを探せば、ホールの中央付近で、身分の高そうな貴族の相手をしている彼をすぐに見つけることができた。
 遠目にも凛々しい立ち姿。金糸の刺繍に彩られた重厚な色合いの衣装に、肩にかけた豪奢なマント。きっちりとセットした金髪が聡明さを際立たせ、男らしい色気が溢れている。
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