厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 鼻筋はすっと通り、完璧な左右対称。顔立ちの美しさが先に立つが、たっぷりとしたマントを羽織り、威厳のある衣装を纏った身体は、軟弱ではない。胸の厚さ、肩幅の広さも男らしく、しっかりと鍛えていることがわかる。

(すごい迫力……)

 まさにすべてを持ち合わせた、至高の存在。世界広しといえども、ここまで完璧な人は他にいないだろう。

 ただひとつ言うなれば、彼が与える印象は決して柔らかくはなかった。皇帝の衣装の布地は黒を基調としており、軍服のようにかっちりとしていて、見る者に畏怖の情を抱かせる。玉座の脇には、不気味な大剣がすぐ手に取れる位置に立てかけられていた。

(やっぱり……怖いわ……)

 なのに、目が離せない。
 震えながらも注意を逸らせずにいると、皇帝の整った唇が、ふいに動いた。

「……フラン、だと?」

 硬質でうっとりするような、深みのある美声だ。なにやら、じっと見つめられている気がする。
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