厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 けれどそれが落ち着くと、すぅっと血が引いていくような心地がして、我に返った。
 現実は、そう甘くはない。むしろ切実だ。
 皇妃になれる見込みは低いのに、ライズから少なからず好意を持たれていると期待してしまう。その矛盾が、フランを苦しめた。

 高貴なシルビア姫が皇妃に選ばれれば、フランは二の次だ。しかし彼は愛人を作るような人ではないと思うから、結婚が決まったあとは、フランは国に帰されてしまうかもしれない。
 もし、そうはならずに側室として残してくれたとしても――それではもう、満足できなくなっていた。愛する人が、フランではなく他の誰かの夫となり、自らは何番目かの妾になるなんて、そんなのは辛すぎる。想像しただけで胸が張り裂けそうだ。

 自分がこんなにも独占欲が強く、貪欲だったとは知らなかった。
 以前、母が言った「なにをされても逆らってはダメ」という言葉が切実に身に迫ってきた。元から、皇妃に選ばれることまでは期待されていなかったのだろう。二番目でも三番目でもいい、戯れとして目をかけてもらうことを望まれていた。母だけなく、父も妹も、きっと祖国の誰もがそう思っていたに違いない。
 そして言いつけのとおり、流れに身を任せることこそが、貢ぎ物として捧げられた者の務めであり、真のあり方なのだ。
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