厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
「なにより、唯一と決めた男性を裏切る行為は、決して許されるものではありません。先々代の皇帝の時代、お渡りがないことを嘆いた側妃が騎士と密通し、双方とも処刑された例もあります。脅すわけではありませんが、不貞は『穢れ』と心得てください」

 刺激的で恐ろしげな話に、背筋がひやりとする。全員が、息をのんだように静まった。

「それからもうひとつ。結婚前のふらちな行為はご法度ですよ。世の男性は、手垢のついた女性を非常に嫌がりますから……。まぁそうは言っても、花離宮にいる皆さんは一律に皇帝陛下のためだけに存在しているのですから、この話は余計でしたね」

 それを聞き、フランはますます血の気が引いていくのを感じた。

(ふ、ふらちな行為って……)

 そっとうつむいて、気持ちを落ち着けようと躍起になる。
 その行為とは、どういったものが含まれるのだろう。昨夜のように抱きしめ合って、キスをしてしまったことは該当するのだろうか。

(相手が皇帝であるライズ様だから……ここにいるうちは、問題はない……わよね。だけどこの先、帝国を出ることになったら……?)
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