厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 冷や水を浴びせられたように、心が冷えていった。
 公務の場に、それも他国と交渉を行う重要な場面に、ひとりの令嬢を連れていく。これがどれほど大きな意味を持つかは、フランにもわかる。それほど信頼され、重用されているなんて、どうがんばっても追いつくことはできないと知らしめられた格好だ。

 呆然としているうちに、ライズとシルビア姫を中心とした一行はホールを抜け、門の外で待機していた馬車に乗り込んで出発していった。
「これはもう、いよいよご婚約の発表も近そうね……」
 隣にいた令嬢が、ため息混じりに呟く。フランはひと言も発せなかった。


 憔悴した風体で華離宮に戻ると、驚いたサリーが心配して事情を尋ねてきた。
 シルビア姫がライズに同行したことを話しているうちに、フランはすっかり諦めの境地になってしまう。

「陛下のことは諦めて、身を引くべきかしら……」

 思い余ってそう口走れば、サリーは悲愴な顔をして、一生懸命に励ましてきた。

「フラン様、そんなことおっしゃらず、ずっとここにいてください。私はこれからもフラン様にお仕えしたいです」
「サリー……」
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