厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています

はかなき皇弟ルーク(4)

 夕方にルークの元を離れたが、空はどんよりと曇っていて、今にも雨が降りだしそうだ。
 ぴょんぴょんと飛び跳ねて、花離宮への道を急いだ。

 大樹の元にたどり着いたときにはぽつりぽつりと雨水が落ちてきた。急いで幹を駆け登り、二階の窓から自分の部屋に飛び込む。
 まずは絨毯の上で、体を振って水滴を払った。
 明かりをつけていない部屋は薄暗い。文字どおり人並みの生活に戻るべく、人間の姿に変わろうとして――。

「――フラン」

 突如、暗闇の中から声をかけられて心臓が跳ね上がった。
 誰もいないはずの部屋に、人がいたなんて。パニックになりながらも、人型に戻り無防備となった体を隠そうと寝台の陰に逃げ込んだ。
 しっかりとした足音が、近づいてくる。

「だ、誰……?」
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