厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています

呪縛からの解放(6)

 城の壁沿いに庭を進んでいくうちに、会場から響いていた音楽も遠のいていく。
 やがて各棟を繋ぐ外回廊が見えてきた。今は客も使用人もメインホールに集まっているから、通りかかる人影はほとんどない。
 けれども前方に目をこらすと、太い柱の陰に男性がひとり立っているのがわかった。旅用の軽装備を身に着けたシャムールの騎士だ。
 ベラとフランが近づいていくと、男が姿勢を正して頭を下げた。柔らかな茶色の髪と瞳をした幼馴染、アルベールだ。

「アルベール!」
「フラン様……ご無事だったのですね!」

 駆け寄っていくと、顔を上げたアルベールはほっとしたような気まずいような複雑な表情を見せた。フランが帝国に捧げられることが決まったとき、力になることができなかったと気に病んでいるのかもしれない。
 フランは晴れやかな笑顔を浮かべ、自分は幸せであると報告した。皇帝の妃になるのだと告げると、アルベールは信じられないという顔で「本当ですか」と尋ねてくる。

「本当よ! それにね、皇帝陛下はとてもステキな方で……」

 すると、うしろから投げられた冷ややかな声に、会話を断ち切られた。

「あら、でも残念ね。あなたは皇妃にはなれないわ」
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