厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています

囲われ王女、帝国での新たな生活(3)

 花離宮のエントランスロビーは上品かつ華やかで、随所に生花や絵画が飾られ、高級感に溢れていた。

 天井にはシャンデリアが煌めいて、吹き抜けのホールを明るく照らしている。磨き上げられた大理石の床には赤い絨毯が敷かれ、二階へ上がる螺旋階段へと動線を導いている。

「フラン様、こちらで少々お待ちください。入宮の手続きをしてまいりますので……」

 そう言って左手の通路へと消えていったサリーの戻りを待つ間、珍しい調度品を眺めながら過ごしていると、

「あら、新入りの方?」

 頭上のどこかから、高い声がかけられた。

 慌てて視線を上に向けると、二階の廊下の縁から鮮やかな貴婦人の集団が顔を覗かせている。人数は一、二、三……全部で五名ほどだろうか。

 赤、青、黄色と色とりどりのドレスを纏った彼女らは、先住の姫たちに違いない。
 エレガントな女性陣がぞろぞろと螺旋階段を下りてくるのを見て、フランはハッと我に返った。

(いけない! ご挨拶をしなければ……)

 相手が階段を下りきる前にそばに駆けつけ、膝を折って姿勢を低くする。

「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。今日からお世話になります、フランと申します」
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